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住民参加で創る公共図書館

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年7月3日

コモンズ代表・ジャーナリスト 大江 正章 (第3005号・平成29年7月3日)

図書館とは言うまでもなく文化と生涯学習の拠点であり、まちづくりの一環として位置づけられるべきである。たとえば、視察者が多いことで知られる岩手県紫波町の図書館は駅前の複合施設の一画にあり、コンセプトは「知りたい」「学びたい」「遊びたい」の支援。3本柱は、①子どもたちと本をつなぐ、②地域資料の収集・保存、③地元の産業支援だ。もちろん直営で、企画課の下にあるという。 

一方で、「効率的な運営」を目指して、公共図書館の指定管理制度が広がるなかで(総務省の2015年調査では14.7%)、多くの問題が起きている。たとえば、非正規(臨時)雇用者の労働条件、指定管理決定過程の透明性確保、図書館にふさわしくない内容の書籍の購入などだ。受託会社の最大手TRC(図書館流通センター)では、図書館サポート事業部門従業員の98.5%が非正規雇用である。 

また、佐賀県内のある市立図書館で大量の売れ残り中古書の購入が発覚したのは、記憶に新しいだろう。同市図書館の指定管理者はCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ。傘下に蔦屋書店)だ。さらに最近は、山口県内のある新設市立図書館(指定管理者はCCC)で、大量の中身が空洞なダミー本やディスプレイ用洋書の購入が明らかになった(ジャーナリスト日向咲嗣氏の報告)。

紫波町とこうした事例のどちらが住民のためになるかは明白だ。図書館内へチェーン店のカフェやレンタルビデオ店を併設することが本来のサービスではない。ベストセラー本を大量購入するのか、今後の社会を考える教養書・専門書をそろえるのか、司書の鑑識眼も問われる。本に関連するトークショーや映画会、ワークショップなどの開催もよいし(それらは図書館法3条で「実施に務めなければならない」と規定されている)、住民からカフェの要望があれば、地元産食材を中心にした手作りの店の設置・運営を考えればよい。

福井県池田町では6月に新図書館を整備するための企画委員会が始まり、筆者が委員長を仰せつかった。16名の委員のうち5名は一般公募で、本好きな方たち。すでに「勝手に図書館を考える会」から提案書も出されている。有機農業が盛んな池田町にふさわしい図書館を一緒に創り上げていきたい。