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高校魅力化プロジェクト

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年4月11日更新

法政大学教授 岡崎 昌之(第2756号・平成23年4月11日)

東日本大震災に被災された皆様に、心からお悔みとお見舞いを申し上げます。三陸海岸では、集落ごと津波にさらわれたところも多くあり、心が痛みますが、必ずや力強く復活されますことを祈念いたします。

災害だけでなくじわじわと迫る過疎高齢化によって、集落が失われ、小中学校の統廃合がすすむ地域は枚挙にいとまがありません。その波が、いまや高等学校にも及んでいます。山間部や島嶼においては、その危機はより高まっています。

島根県隠岐は島前、島後からなりますが、島前の三つの島々(中ノ島、西ノ島、知夫里島)に立地するのが隠岐島前高等学校です。中ノ島・海士町にあり、他の島からは生徒は船で通ってきます。船で通うならいっそのこと県都の松江市に下宿を、という生徒も出て、高校の存廃問題がおこりました。しかし高校が廃校になれば、多くの住民が離島し、過疎化が一層進むという強い危機感が生まれ、今では島を挙げて高校の魅力化に取り組んでいます。

海士町は大胆な行財政改革の断行と、独自の産業創出で地域再生に取り組み、島外から250名をこえるIターン者を受け入れています。これからは島の大人のみならず、子ども達にも島の魅力と可能性を認識させようと「島前高校魅力化の会」を立ち上げました(平成21年2月)。

まずは進学実績を上げることで、高校でも個人指導を強化する一方、町が民家を借り上げて公営学習塾「隠岐國学習センター」を設置しました。首都圏の大手予備校や企業研修などの実績を持つIターン者でキャリア教育のプロ達6名が、毎週、高校の進路指導者と打合せを重ねながら指導しています。全校の3分の1の生徒が毎日通ってきて、学習だけでなく地域社会との連携を深めた地域活動にも取り組んでいます。

また高校では、島の豊富な地域資源を活かしたまちづくりを視野に入れた「地域創造コース」も設け、高校生時代から地元への関心を高める試みも始めています。保育所から高校まで連携する仕組みや全国から入学生を募る島留学など、島の未来を切り拓き、地域の活力を担う教育機関として、町と高校が一体となって魅力化に取り組んでいるのです。