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根子・菜の花番楽まつり

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年8月30日更新

法政大学教授 岡崎 昌之(第2731号・平成22年8月30日)

初夏の暑さが身にしみ始めた6月の日曜日、秋田県旧阿仁町の根子集落で「第一回根子菜の花番楽まつり」が開催された。休耕田に植えられた菜の花を背景に、重要無形民俗文化財の根子番楽などを楽しんでもらおうという祭りだ。

その仕組みがすこぶる楽しい。盆地になった根子に入るには、たったひとつのトンネルしかない。そこを抜けた集落の入口に関所(受付)を設け、秋田杉で作った入村手形を2,000円で買ってもらう。昼食付はプラス1,000円。この入村手形を首からかけておけば、この一日、根子で催される祭りの行事に全て参加できる。

10時半の開会と同時に、参加者は集落をゆっくりと散策したり、マタギの守り神「山神社」に参ったり、地元産品を買ったりと、てんでに楽しんでいた。しばらくすると、交流施設「二又荘」で“マタギとの語らい”が始まったが、希望者が会場に入りきれないほどの人気。迫力のある本物のマタギの話や、子どもの頃、熊に襲われた経験を持つ元住民の体験談に参加者は魅了された。地元食材を使った昼食や冬の楽しみの寶引きも楽しんでいた。

何といっても圧巻は、廃校となった根子小学校の講堂で演じられた番楽であった。子ども達を中心に演じられる迫力溢れる演技に参加者は圧倒された。

戸数70戸、約170人の過疎化する集落が、この日は300人を超す人たちで賑わった。これまで集落内で若者や子どもの姿を見かけることは殆ど無かったが、この日ばかりは祭りを支える若者や走り回る子どもがまぶしいほどだった。当初は集落の人たちが県内に住む親戚に呼びかける程度で、と考えていたこの祭りだが、秋田根子の会の協力で、宮城県や関東からも多数が駆けつけた。

きっかけは3年前、まちづくり元気塾を契機に、住民が再度、集落を見直すことだった。自治会をはじめ根子番楽保存会、婦人会など、集落内の各住民グループが横断的に協力し合い、根子集落始まって以来の協働の祭りが開催できた。風の便りによると、この冬には楽しみを倍加した厳冬期ツアーも予定されているようだ。