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市町村合併の諸相

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年3月24日

法政大学教授 岡崎 昌之 (第2634号・平成20年3月24日)

兵庫県篠山市は、昭和の合併時5町村であったが、昭和50年には3町、平成11年にこの3町が合併し1市となった。平成の市町村合併の先行例として、合併を検討する多くの市町村が篠山市を訪れ、合併実施後の市の姿を参考とした。

篠山市では、合併に際して平成18年までに約227億円の特例債を活用して、中学校移転改装、図書館建設等の社会資本整備を集中実施した。その他の要因もあり、全会計を併せて、地方債残高は1,100億円にまで膨らんだ。また地域の中核的医療施設の改修工事負担金なども今後予想され、財政状況は厳しい。

そこで市は公募委員からなる「篠山再生市民会議」を立ち上げ、行財政改革と地域再生の方策を諮問し、昨年11月に、職員給与や議員報酬の削減等からなる答申が提出された。

合併時、旧町役場は職員30人規模の総合支所となったが、現在では8人が標準規模となり部長級であった支所長も課長級となっている。山間部となる東部、北部では高齢化で集落維持が懸念される地区も出ている。合併時6万人を想定した人口も4万6千人へと微減状態にある。 

こうした中、市では篠山への定住、回帰運動として「ふるさと篠山へ帰ろう住もう運動」を立ち上げ、庁内若手職員で具体的な方策を模索し始めた。それに呼応するように北部の草山地区では、神戸大学と連携して、学生と住民によるワークショップを繰り返し、地区の資源を活用した草山郷づくり活動が始まった。地元高校生を中心としたよさこいを歌い踊る「楽空間(らくーかん)」のメンバーたちも、大好きな篠山にぜひ留まりたいという。

地理的には市域の中心部にあたる丸山集落は、一本の農道を辿って行き着き、丸山で行き止まりとなる。

9戸からなる小さい集落は高齢化しその内5戸は無住状態となっているが、全てが立派な萱葺の形態を残し、それぞれの石垣の上に肩を寄せ合うようにたたずむ。集落の入口から望見する集落の姿には息を呑むものがある。幸い市の有志によって集落再生の模索が始まっているようである。