法政大学教授 岡崎 昌之 (第2526号・平成17年7月11日)
「地域ブランド」が話題になっている。論点は2つあり、1つは地域特産品のブランド化のこと、もう1つは地域の個性やイメージとしての地域ブランドのことであろう。これら2つが混同され、いくらか議論が混乱しているようだ。地域特産品としての地域ブランドとは、大島紬や南部鉄器などの伝統的工芸品、また夕張メロン、関サバ、越前ガニなどの農水産品などが話題となっている。その土地特有の伝統や風土に根付いた産物や役務に対して、商標としての保護を与えるべきだというものだ。
これまでは、地域名称は範囲が特定しにくく商標としてほとんど認められなかった。その結果、各地の特産品は類似品に悩まされてきた。しかし今国会に商標法の一部を改正する法案が提出され、地域ブランドも知的財産や商標として認められやすくなった。今後、産品の質を向上させ、他産地との差別化を図り、消費者の要望に応えるよう、産品のブランド性を磨き上げていくことが、まちづくりの観点からも欠かせない。
このことに深く関係してくるのが、もう1つの地域ブランド、地域個性や地域イメージとしての地域ブランドだ。特産品としてのブランド性を高めていくためには、それを生み出す地域が美しく、個性的で、魅力的な暮らしぶりを持ち、話題性に富んでいることが望ましい。つまり、まちとしてのブランド性が高く、あのまちの人たちが食べている、使っているものなら、と関連付けて評価されることが不可欠である。特産品の素材としての地域資源と地域性が統一されたイメージとなってはじめて地域ブランドが形成されるからである。
日本初の自治体ワインづくりとして有名な北海道池田町は、その十勝ワインを池田町の産品として定着させるために、ヨーロッパ・ワインツアーを実施していた。東京や大阪の大消費地への販売量を拡大するよりも、町の中にワインを軸にした生活文化を形成するため、ワインのある生活とは何かを、住民とともにヨーロッパから学ぼうとしたのだ。特産品としての十勝ワインの地域ブランド形成のまえに、ワインのまち池田の「まちブランド」を構築しようとしたのだった。
美しいまち、魅力ある暮らしぶりといったまちブランドがあってはじめて持続的な地域ブランドはつくられる。