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シーニック・ハドソン

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年5月29日

福井県立大学教授 岡崎 昌之 (第2316号・平成12年5月29日)

全国で民間非営利活動団体の立ち上げが盛んとなっている。成立したいわゆるNPO法の活用ということもある。これまで法人としての位置づけが不安定だった団体やグループが、この法律に基づいて法人格を取得して、本格的な活動に乗り出そうとしている。しかしそれ以上に、地域を巡る様々な課題に対して、市町村に多くを依存するのではなく、地域住民自らが積極的に取り組もうとする住民の姿勢変化を見逃してはならない。

この住民と行政との新しい関係こそが、二一世紀の地域のあり方を変えるものとして期待出来る。といっても殆どのNPOでは活動資金、専門的能力、スタッフ等々、多くの課題に直面しているのが実情だ。

ニューヨークのマンハッタン島の西側を流れるのがハドソン川だが、ここから上流に逆上ること約120kmにポケプシーという小さな町がある。このあたりまで来るとハドソン川の両岸は豊かな自然が溢れている。この町に本拠を構えるのがシーニック・ハドソンというNPOだ。ハドソン川に建設されようとした巨大な発電用ダムに反対して、ニューヨークの文化人を中心に1963年に設立されている。

住宅地の一角の古い建物を本部に37名のスタッフが生き生きと活動している。自然保護、環境教育、テレビ局も巻き込んだ川のクリーンアップ作戦、工場跡地の再開発、自然遊歩道や公園建設、土地買収と住宅地開発等々、活動は多岐にわたっている。

注目すべきは活動資金集めと充実したスタッフだろう。資金集めには専門のスタッフが常駐し、分厚い財団要覧と首っ引きで、このNPOの活動を支援してくれる企業財団や個人財団に目配りをしている。全体の予算は3億円だが、うち2億円はこうした財団からの寄付でまかなわれている。6,500人の個人寄付者もいる。たんに寄付をして貰うだけでなく、シーニック・ハドソンが実施している事業を巡るツアー、ハドソンクルーズやディナー招待など楽しいプログラムも用意されている。スタッフには都市計画やマーケティングの専門家、建築家、弁護士といった第一線のスペシャリストが、州や市町村当局と対応しながら、実際の活動の現場で活躍している。