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じょんのび

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年1月24日更新

福井県立大学教授 岡崎 昌之 (第2300号・平成12年1月24日)

「じょんのび」とは「ゆったり、のびのび、なんとも心地よい」という意味で、新潟県の中越地方の人々が使う言葉。この「じょんのび」をまちづくりのキーワードにして、高齢化、過疎化を乗り越えようとしているのが中越の高柳町だ。町役場の春日俊雄さんは「体の芯から心地いい、心地いいの最上級」と「じょんのび」を説明してくれる。

高柳町も例にもれず高齢化、過疎化に苦しむ中山間地域だ。町政施行30周年の1985年の国勢調査時には、人口が17%も減少し、県内ワーストワンという状況でもあった。それまで何もせず手をこまねいていた訳ではない。1960年代から道路や学校といった生活基盤施設、産業基盤施設の整備、企業誘致、特産品開発等に懸命に取り組んできた。それでも人口は減少する。「このままでは町がなくなる」といった危機感が生まれてきた。

危機感をバネに住民主体のグループが提案したのが、交流と観光をテーマにした取り組みで、その中核施設が「じょんのび村」だった。次のような項目が確認された。農山村の資源を活かし新しい経済循環をおこす、地域に誇りと自信を取り戻す、農山村を丸ごと活かし守る、その中から、町の人も、外から訪れた人も「じょんのび」となれる高柳を創ろうというのである。

宿泊、飲食、販売機能を備えた「じょんのび村」には年間30万人を越える入り込み客が訪れる。大きな雇用の場ともなり、Uターン者も増えるようになった。周辺の茅葺き家屋の残っている荻ノ島、門出の2集落には、地元住民との交流を深めてもらうため、新たに茅葺きの宿泊施設も建設し、好評をはくしている。

どうも一番元気になったのは、町の女性達のようだ。その土地で季節毎に採れるものばかり四季を通じて食べる「ばっかり食」グループ、炭づくりと炭の活用を家庭内で実践するグループ、地域特産の瓢箪を楽器にしてコンサートまで開く「ザ・ひょうたん・フィルハーモニック」、そしてやっと女性議員も誕生した。