福井県立大学教授 岡崎 昌之 (第2291号・平成11年10月25日)
2000年代へと年号が変わるのをひとつの切っ掛けに、全国の市町村では21世紀を見据えた新しい総合計画の策定が数多く取り組まれている。計画づくりの過程においても、ややもすれば外部のコンサルタントに一任してしまうという従来の方式は、今では殆ど姿を消した。代わって自治体職員自らが、アドバイザー等とタイアップしながら、地域住民の参画を得つつ、計画策定に取り組む努力を積み重ねているのが現状といえる。
アメリカ西海岸のオレゴン州政府の地域計画は、こうした日本の総合計画の一歩先を行くものとして評価が高い。オレゴン州は人口300万人、州の中央をカスケード山脈が走り林業地域を形成し、東には農業地帯と砂漠が広がる。しかし最近では西側のウィラメット川流域の平野部に位置する都市部において、ハイテク企業も多く立地するようになった。
こうした状況を反映してオレゴン州政府は、1997年に州の総合戦略計画“オレゴン・シャインズⅡ”を策定した。この計画の骨格をなすのが、ベンチマークである。ベンチマークとは土木用語で水準点であるがオレゴンの計画では“政策到達目標値”といった意味合いである。まず計画では“質の高い雇用”“参加しやすい地域社会”“健康で持続可能な環境”という3つの計画目標(ゴール)が掲げられた。この目標を達成するために経済、教育、福祉、環境といった主要政策分野に、92のオレゴン・ベンチマークが設定された。
これらのベンチマークは、例えば「人口一人当り個人所得の全米平均に対する比率」「ボランティア活動に年50時間以上携わっている州民の割合」等、できるだけ実測可能なもの、他州と比較可能な分かりやすいものとしている。またこのベンチマークは計画書としてきちんと一般に公開され、州知事を委員長とするオレゴン発展会議は、隔年でベンチマークの達成度合いを議会に報告することが義務付けられている。
このような仕組みとプロセスが、計画の中に位置付けられることによって、より住民に身近な実効性のある計画となっていくのであろう。