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3年目となる地方創生

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年8月29日

明治大学教授 小田切 徳美(第2971号・平成28年8月29日)

地方創生本部事務局が正式に立ち上がったのが2014年9月5日であった。つまり、地方創生はもうすぐ3年目に入る。

振り返れば、1年目は国レベルでの取り組みが中心であった。地方創生法が制定され、それに基づき総合戦略や長期ビジョンも作成された。

2年目は、地方自治体の活動期となった。努力義務とされた地方版総合戦略を早々に策定した団体もあったが、多くは2015年の夏以降に本格的な検討が行われ、今年3月までにほとんどの自治体で作成された。

そうなると、3年目は市町村内の地域コミュニティの活動が注目される。本来は、それらの計画と実践が先行し、ボトム・アップで市町村段階の総合戦略が作られるのが理想である。 しかし、現実にはそれができたのは一部の自治体に限られており、これからの3年目には、コミュニティ・レベルでの計画作りや活動の本格化が課題となっている。

そのために期待されるのが地域運営組織である。先頃(8月10日)、 地方創生本部の有識者会議が「地域の課題解決を目指す地域運営組織―その量的拡大と質的向上に向けて―」という「中間とりまとめ」を作成したのは、タイミングとしても意味あることだろう。

そこで、論じられた課題は多方面に及ぶ。特に、現場での実態から見て、重要になるのが、地域運営組織を支える人材の育成・確保である。当然、地域内部の住民を中心としつつも、 外部からのサポート人材なども必要となる。「中間とりまとめ」では、地域運営組織のトップランナー事例のひとつである山形県川西町の「きらりよしじまネットワーク」の人材育成の仕組みを紹介している。

また、自らの地域のためだけではなく、広域的な人材育成の場を用意する組織もある。 たとえば、和歌山県田辺市の地域運営組織「秋津野塾」では、関連組織である株式会社「秋津野」が和歌山大学と提携して、「秋津野地域づくり学校」(現在は「紀州熊野地域づくり学校」)を開講し、 自らの経験を素材として、地域内外の人材教育の場を作っている。

これらの実践は、コミュニティ・レベルの地域活動と人材育成はなんらかの関係を持つ必要性があることを私たちに伝えている。

地域運営組織づくりと人材づくり。いずれも、顔が見える関係を重視してきた町村の得意分野であろう。3年目の地方創生には、町村部の活発な活動に期待したい。