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新政権に問う、農山村政策

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年11月16日

新政権に問う、農山村政策

明治大学教授 小田切  徳美 (第2699号・平成21年11月16日)

民主党を中心とする政権が発足した。この新政権がいかなる地域振興政策、特に空洞化が進む農山村に対する総合政策を打ち出すのか注目されている。

自民党政権の末期には、選挙・政局を意識して、都市重視(小泉内閣)と地方・農山村重視(福田・麻生内閣)に方針が大きく振れた。このような選挙戦略といった次元とは無縁で骨太の国土・国民生活・国民経済における都市と農山村の位置づけとその関係のビジョンが語られなくてはならない。

その際、新政権が特に意識すべきは、このままでは都市と農山村の対立傾向が強まる可能性がある点である。そこには2つの理由がある。

ひとつは、都市の高齢化の進行である。住民の年齢階層に偏りのある都市部では、今後急速に高齢化が進むことが予測されている。その先駈けが「オールドニュータウン」と呼ばれる郊外団地であり、高齢化のスピードはかつての中山間地域を上回るという。

最近では、こうした近未来図が見えるにつれて、一部の識者が、「大都市の高齢化こそ問題だ」と早速論じ始めている。都市の不満と不安が増大する時には、「地方や農山村を偏重しすぎたから、都市の危機が生じた」という筋違いの責任転嫁や農山村バッシングが生じやすい。小泉構造改革期がまさにその時期であった。

ふたつは、他ならぬ新政権の政策手法である。「戸別所得補償制度」に見られるように、直接給付型の政策手段が様々な分野でとられようとしている。しかし、特定の世帯や地域への直接給付は、給付対象者と非対象者、対象地域と非対象地域の無用な対立構図を作り出す可能性が少なくない。すでに定着している中山間地域等直接支払制度においても、この問題の緩和のために、政策当局や集落協定の現場は大きなエネルギーを割いている。

しかし、都市と農山村の感情的対立や国論の不毛な分裂からは、社会の未来は生まれない。両者の共生を軸とするユニークな国づくりへ向けた前進こそが求められている。それを十分に意識しない諸政策は、都市、農山村双方の将来に取り返しがつかない禍根を残すことになる。

そのために、あわてる必要はない。拙速であってはいけない。しかし、先見性のある前倒しのビジョン構築が必要である。