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集落支援員と若者

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年11月3日

明治大学教授 小田切 徳美 (第2658号・平成20年11月3日)

集落支援員をめぐる議論が活発化している。

この集落支援員とは、過疎問題懇談会(総務省)が「過疎地域等の集落対策についての提言」の中で、その必要性を本年4月に提案したものである。そこでは、集落への「目配り」としての定期的な巡回、話し合いへの参加、再生に向けた新たな活動へのサポートを市町村と協働して進めるという役割が期待されている。

その支援員設置の推進が、今年度の特別交付税の措置により、早速実現することとなった。対象経費には、活動旅費、集落点検(ワークショップ)経費のみならず、支援員の報酬を含む点で、従来の施策から一歩踏み込んだ対応と言えよう。

農業・民俗研究家の結城登美雄さんは、この仕組みを評価したうえで、「集落支援員とはたんなるお役目仕事ではない。与えられた職務を果たせば終わりではない。あえて言うならば、わが村をもっとよくしようとして加わった、新たな村人でなければならないのではないか」(『増刊現代農業-集落支援ハンドブック』)と言う。

ここから、地域の実情を良く知る行政や各種団体の経験者などとともに期待されているのが、地域おこし組織などに参加する若者である。最近の傾向として、都市出身の青年が、NPOなどを足がかりとして、地域支援に真摯に向かい合っている姿を見ることができる。筆者の接する大学生にもこうしたメンバーが確かに増えている。彼らを動かしているのは、日本の農林漁業や農山漁村の現状に対する危機感であり、「自分自身で何かできないか」という強い思いである。これらの若者の農業・農村での経験は未熟であるのは当然であるが、しかしその思いは本物である。

そして、このような若者の中には、地域支援を将来の職業とすることを望む者もいる。また、様々な地域の支援活動をしながら、自らの定住場所(Iターン先)を探す者もいる。つまり「支援員から地域マネージャーへ」「支援から定住へ」という動きを支える仕組みが、いま求められている。また、地域外部からの若者支援員と、内部の行政経験者等のベテラン支援員がセットとなり、集落とかかわるノウハウが蓄積される必要もあろう。

動き出した若者と危機に瀕する集落。この組み合わせの中に、新たな農山村のあり方とそれを支える政策を考えるヒントが溢れている。