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二〇一〇年問題

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年1月21日

明治大学教授 小田切 徳美(第2626号・平成20年1月21日)

世界中のコンピューターの誤作動が懸念され、社会問題化した「西暦2000年問題」以来、「○○年問題」という表現をしばしば目にする。例えば日本の人口減少社会への転換を指摘した「2007年問題」は、他方では団塊世代の一斉退職に伴う問題を指すこともあり、マスコミでもよく使われている。

こうした表現は、一時的なインパクトだけを指しているものではない。それぞれは「人口減少」「団塊退職」を対象としながらも、むしろ日本社会や地域社会が「時代の転換点」を迎える可能性を示している場合が少なくないのである。そうした点では、農山村には「2010年問題」があり、それは時代の大きな転換点となる可能性を孕んでいる。

そこには、いくつかのインパクトが輻湊している。2010年と特定されるのは、政策的インパクトである。この年の3月末には、次の3つの制度が更新期を迎える。ひとつは、過疎法である。10年間の時限法である同法はこの時に期限切れを迎え、「ポスト過疎法」が課題となっている。ふたつは、市町村合併特例法である。

「平成の大合併」を強力に押し進めた旧法は、2005年から現行法に代わったが、それがこの時に失効する。その際、再度強力な合併を想定する新法が制定されるのか否か、合併に翻弄された農山村には大きな関心事であろう。そして、3つは、中山間地域等直接支払制度である。新しい手法で条件不利地域を支えている同制度も同じ時に第二期対策を終える。同対策のスタートが、必ずしもスムーズではなかったことを考えると、新対策への継続には高いハードルが出現する可能性も否定できない。

こうした点に加えて、農村社会の内部の変化も生じつつある。昭和ヒトケタ世代の本格的高齢化である。戦後日本の農山村では、一貫して昭和ヒトケタ世代が中心世代であった。しかし、この2010年前までにこの世代全体が次々と後期高齢者となっていく。いままで農林業や農山村を支えていた世代の本格的高齢化は、農村社会の運営にマイナスの影響を与えることは明らかであろう。

こうして、諸々のインパクトが2010年及びその前後に集中する。そのため、これらの対応のひとつでも適切になされなければ、日本の農山村は深刻なダメージを受ることとなろう。各制度のあり方に対する政策提言をはじめとする関係者の積極的な対応が求められている。

これからの2年間が我が国の農山村地域にとって、真の正念場である。