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男性脳と女性脳

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年2月13日

日本大学経済学部教授 沼尾 波子 (第2789号・平成24年2月13日)

脳科学の分野では、男性と女性とで脳の働き方が異なるという研究が進められているそうだ。

研究によると、たとえば「男性は、問題解決が大好き。女性は、問題を話すことが大好き」だという。男性は、何か問題が起こると、その解決にむけて思考する。だが、女性は問題を解決することよりも、誰かに話すことで満足を得る傾向にあるという。井戸端会議にみられるように、人にあれこれ話をしながら、問題の「解消」を図るのである。

夫が悩んでいると、妻はひたすら話を聞こうと声をかけるが、一人で思考をしたい夫には邪魔以外の何ものでもない。反対に、妻は悩みがあれば夫に話を聞いてもらいたいのだが、夫はそっとしておこう、いろいろ考えたいだろうから、と放置してしまう。この違いを互いに理解しあうのが夫婦円満の秘訣だそうだ。

地域づくりの取組みの中にも、男性脳タイプの課題解決型と、女性脳タイプの、思いつきをどんどん聞いてもらいながら進める取組みとがあるようだ。女性が元気なところは、地域も元気、という話を時々耳にするが、きっと、思いついたことをワイワイ話しながら、どんどん形にしていくのだろう。

課題を設定し、その解決策を考えることも大事だが、日々の何気ない会話の中で出てきたことを、みんなでやってみるという井戸端会議型スタイルの中から、新しいことが生まれることも多い。

井戸端会議型の難しいところは、どんなアイディアが出て、どこに進んでいくのかが、事前に予測しづらいところにある。さらに言えば、走りながら考え、突き進むという手法は、行財政運営の論理とは極めて馴染みにくい。事前にゴールや成果が見えないため、計画的な予算化がしづらいのである。

こうした点で、地域コミュニティや事業団体に一定の金額を交付し、年度末に使途を報告するという財政支援の在り方は、「井戸端会議型」と親和性をもつ。また、行政の各セクションに、ある程度柔軟に使用できる財源や人員を配置しつつ、井戸端会議型の取り組みを推進できる余地を残すという方法も考えられよう。もちろん、その際には、財源の使途等について、事後チェックが必要であることは言うまでもない。

「男女共同参画」といわれるが、その推進には、男女の特性を踏まえた社会参加の方法と、それを支える行財政支援の在り方を考えてみる必要がありそうだ。