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水土を拓いた人びと

印刷用ページを表示する 掲載日:1999年10月11日

水土を拓いた人びと

東京大学名誉教授 西川 治 (第2289号・平成11年10月11日)

名産や文化財を創造した人びと、その継承者の育成・輩出こそ、真に郷土の誇り、国の光りとなる。今夏社団法人農業土木学会は、その創立70周年を記念して『水土を拓いた人びと』(B5判、488ページ農文協)を出版した。まさに21世紀への偉大な贈物である。

新田開発・干拓、土地改良・耕地整理など郷土の発展に尽力し、ひいては国の経済基盤にも貢献した偉人70余名を各都道府県から1~3名選び出し、それぞれの人物像、末長く恩恵を与えてきた偉業の動機、実現過程の苦心、技術工夫、成果と影響等について5~6ページにわたり要説、対象地区の略図や写真(人物像・遺構、記念碑など)も掲載、専門用語の解説・文献・年表なども付されている。

本文の執筆者は原則として現地の適任者があたったので、「一将功成りて万骨枯る」を念頭において、今後は当該偉人の協力者たちについても調査研究や教育普及を期待したい。

文部省の小学校学習指導要領によると「社会」の第3、4学年の目標の1つは、「地域の地理的環境、人びとの生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについて理解できるようにし、地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする」とある。やがて学校も週5日制になり、郷土学習の重要性は一段と高まるので、本書は生涯学習も含めてまさしく好適な参考書となるにちがいない。

幸い筆者は傍流ながら、本書の編集委員会に顧問として参画させて頂けた。すでに現地調査でなじみ深い、後藤寿安(岩手)、渡部斧松(秋田)、安積疏水、那須疏水、大原幽学、藤井十三郎(富山)、入鹿池、熊沢蕃山、二宮尊徳などのほかに、多数の新知識も得ることができ、今後の現地探訪の楽しみも増えた。筆者は近く、町村週報によせた閑話休題八三編も含む『日本水土考の余滴』(デマンド社、Tel・Fax03-5229-5810)を出版する。瑞穂国の水土をさらに大事にしたいものである。