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人間には無限の可能性がある

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年9月19日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2973号・平成28年9月19日)

人生において、幸せであることの一つに、立派な師に出会うことがあります。私は幸いにも、生前の平澤興先生(元京都大学総長)に三度お目にかかりました。

お目にかかって先生の教えを直接聴く機会があり、偉大な人格に接し、大変深い感銘を受けました。平澤先生こそわが道を指し示していると心酔してきました。わがこころの師であると固く決めていたのです。

偉大な脳神経学者であった平澤先生が晩年、特に力を尽くされたことの一つに、家庭教育の普及運動があげられます。平澤先生は早くから脳科学に基づく深い洞察によって、 人間の基本的な性格は幼児の時期に形づくられるという考えから、幼児教育の意義、そして母親の役割の重要性を痛感されていました。

京都大学の総長を退任された後、全日本家庭教育研究会(全家研)の初代総裁として教育者としての余生を、全家研運動に捧げるというほどの意気込みだったといいます。

当時、教育における本質的な役割として、「母」の存在を謳いあげた人は誰もいませんでした。平澤先生のこの呼びかけは、医学者として、教育者として真剣に教育を考え続けてきた人の、 祈りに近いものでした。

講演活動において、最も力説されたことは、「人間には無限の可能性がある」ということでした。平澤先生は、「人間には140億個の脳神経細胞があるが、 それを全部使い切ったものは一人もいない」ことを強調し、楽しい学習こそが、人間の可能性を伸ばすことだと、説かれました。

なお「平澤興一日一言」、「生きよう今日も喜んで」、平澤興講話選集「生きる力」全5巻などが致知出版社から刊行されています。