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科学と宗教は相互補完の関係

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年9月28日

筑波大学名誉教授 村上 和雄(第2934号・平成27年9月28日)

今年の4月6日、東京でダライ・ラマ法王と日本の3人の科学者により「次世代のための環境シンポジウム2015」が行われた。 環境問題に関しても広い見識がある法王が「私は今でもこの問題については学び続ける生徒です」と言う基調講演から始まった。

「世界は今、経済、戦争、環境問題が密接に絡まっており、限られた地域の資源を有効に使うために、富める人たちが贅沢なライフスタイルを改める必要がある。 そのためにも貧富の差を少なくすべきである。今こそ、グローバルな人類のことを考えねばならない。そして、我々の人間性はポジティブ(善)だと言うことを知ろう。知ることが力になる。 残虐なテロリストも愛のある母親から生まれた。本質が悪いのではなく、環境によるものである。」

私たち日本人に対しては、「若い人は世界に出て行ってほしい。日本人は勤勉なので、他国で大きな貢献ができる。そのことは、若者自身が人として大きく成長できることでもある。」とメッセージを送った。

法王の基調講演の後、環境学の第一人者である山本良一・ 東京大学名誉教授から古今未曾有の危機に面していることが述べられた。「このままいくと2025年に地球の生命維持システムが不可逆的に劣化してしまう」という。 エコ文明への転換はもはや後戻りできず地球のすべての生物に関わる事態となっている。

次に、宮脇昭・横浜国立大学名誉教授の植林活動が紹介された。日本だけに止まらず世界各地で4000万本以上の植樹に関わってこられた宮脇先生の活動は、地球的危機を克服するための具体的な答えである。

最後に私は、地球環境や資源の問題を解決するには、単に科学技術だけでは不完全であり、大自然(サムシング・グレート)への深い畏敬の心を持つ宗教的アプローチが必要で、 そのためには科学者と宗教者の対話がこれからますます大切になると訴えた。