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小惑星探査機『はやぶさ』の活躍

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年2月14日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2749号・平成23年2月14日)

2010年は日本にとって暗いニュースが多かった。その中で、私たちに感動を与えたニュースは、小惑星探査機『はやぶさ』の活躍であった。

7年間に及ぶ『はやぶさ』の旅は、苦労の連続であった。通信途絶により地上との連絡が絶え、一時は宇宙の「迷い子」になった。

さらに、エンジンの故障により航行不能になりかけたが、生き残ったエンジンをつなぎ合わせて無事6月に帰ってきた。  

今回の成果は、月よりも遙かに遠い3億キロ(地球一周の約7,500倍の距離!!)の小惑星イトカワ(最長540メートル)に見事に到着し、帰還した世界初の快挙であった。

今回の成果は、日本人研究者や技術者が知恵を絞って打開策を編みだした、見事なチームワークの勝利である。  

『はやぶさ』が無事帰還しただけでも夢のようなのに、それに加え、11月には『はやぶさ』が採取したものがイトカワの微粒子であることが確認された。

今回、入手した試料は地球環境の影響を受けていないため、詳しい分析によって、太陽系の歴史を塗り替える科学上の発見が期待されている。  

さらに、その先に生命誕生のナゾに迫る発見があるかもしれない。このイトカワから採取された試料は、世界に配布される予定で、日本の成果が世界の科学研究に貢献する。

これらのことは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)により計画されたものである。このJAXAは、私の住んでいるつくば市にあり、知人もいるので特にうれしかった。

この成果は、単に科学研究者に勇気を与えただけでなく、多くの日本人に誇りを与えたように思った。