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21世紀は日本の出番

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年1月18日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2705号・平成22年1月18日)

日本人は、古代より八百万の神や、大自然の偉大な動き(サムシング・グレート)についてずっと考えて生きてきた。私たちの身体は、地球からの借り物である」という思想も日本にはある。これは、科学的にも正しい。私たちの身体のすべての元素は、地球から来ている。

借り物であるから、私たちは一定期間地球に存在したら、身体をすべて地球や宇宙に返さなければならない。 

これからの時代は、「いのちの元の親」でもあるサムシング・グレートに感謝して、自然と共に生きるという日本的な考えが、世界中で必要になってくる。

科学・技術に片寄り、弱肉強食、優勝劣敗の考え方では、人類はやがて滅びるかもしれない。環境科学者は、このまま20年間対策なしで推移すれば、地球環境は修復不可能の時を迎え、第六の生物大減滅期が来ると警告を発している。まさに、いま行動を起こさなければ永遠に修復できない。

人間だけでなく、微生物、昆虫、植物、動物も全く同じ遺伝子暗号を使っている。生物の長い歴史から見れば、生きとし生けるものは、すべて兄弟姉妹、親戚、ご先祖様とも言える。 

自然と共に生きるという、日本人が培ってきた文化や思想は、世界の平和で役立つ。世界第二位の経済大国であり、科学・技術を高いレベルでマスターしている日本人だからこそ、その高貴な精神文化を世界に向けて発信できる。

いまの日本人は、この精神文化の遺伝子が眠っているに違いない。この遺伝子をオンにすれば、日本は、科学・技術と日本文化を併せ持つ素晴らしい国になり、世界に貢献できる。

事実、阪神・淡路大震災の時、暴動も起こらず、延べ百万人のボランティアが出た。21世紀は日本の出番である。私は、この眠っている遺伝子のスイッチをオンにするのは、日本を道義大国や文化大国にして、世界に貢献しようとする高い志だと思っている。