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あなたは生きているだけで奇跡

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年6月16日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2443号・平成15年6月16日)

同じ両親から生まれても、兄弟で顔立ちが違います。たとえ双子でも少し違います。

これは、明らかに遺伝子が違うということです。一組の両親から、どれだけの種類の子供ができるのか。これを計算すると、その可能性は約70兆なんです。

ヒトの遺伝子は、46個の染色体の上に並んでいます。その46個は、父親から受け継いだ23個と、母親から受け継いだ23個が、それぞれ同じ形のもの同志ペアになっているのです。つまり、私たちの細胞は、それが受精卵として生を受けたとき、父親から23個、母親から23個受け取り、それらを忠実に複製して2セットずつ、全ての体細胞に分けていたのです。

そこで、一組の両親からは、約70兆の種類の子供が生まれる可能性があるのです。これはもう、奇跡的な数字です。まさに、あなたは70兆の中から選ばれて生まれてきた、かけがえのない一人なのです。

父親からの遺伝子と、母親からの遺伝子の情報を受け継いだ受精卵には、生物の設計図がちゃんと、全て入っているのです。人間がいくら努力しても書くことのできない、人間を作るための設計図です。

母親の胎内にいる間に、原始生命から人間までの、30数億年の生物の進化の歴史を再現するのです。壮大なドラマが、胎内で繰り広げられています。受胎したとき、下等な動物から出発して、だんだん進化します。たとえば、魚のような時もあります。胎内での生活を終えて、この世に生まれてくる時は、地球生命で数えると38億歳かも知れません。

世界の富を全部集めても、世界の学者を全て集めても、木の葉一枚、大腸菌一匹すら、コピーはできても、元からは創れません。両親だけで子供はつくれないのです。

生きているだけでも、まさに大変な奇跡です。生きている、それだけで素晴らしいことです。