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「いのち」は大自然からの贈り物

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年3月31日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2433号・平成15年3月31日)

ほとんどの人は「自分の身体は自分のもの」だと思っています。不思議なことに、自分は眠っているのに、心臓も、肺も働いています。もし自分のものなら、自分の自由になるはずです。ところが、もっと生きていたいと思っても、寿命がくれば大自然に返さなければならないのです。自分の身体さえも、自分の自由にならない。ということは、寿命の間だけ、大自然から身体を借りて、この世の中で生活しているのではないでしょうか。

遺伝子解読によって生命のナゾが解けると期待されたのですが、その解読が進むにつれ、話はそう簡単ではないことも分かりつつあります。生命の仕組みは、驚くほど不思議なことばかりです。人は「生きる」などと簡単にいいますが、自分の力だけで生きている人は、地球上に一人もいません。

私は、「いのち」は大自然(サムシンググレート)からの贈り物だということを、科学の現場で強く感じております。両親が子供を作ったといいますが、両親は、そのきっかけを与えて、栄養を与えたくらいのものです。

最近の遺伝子研究で「遺伝子の働きは、それをとりまく環境や外からの刺激によって変わる」ということが分かってきました。正確にいえば、それまで眠っていた遺伝子を目覚めさせればよいのです。

人間の幸、不幸は生まれつきの遺伝子で決まっているのではなく、幸せに関係すると考えられる遺伝子は、誰の遺伝子にも潜在しているはずです。その遺伝子を目覚めさせればよいのです。私は、感動、感謝、喜びなどが、いままで眠っていた良い遺伝子をオンにすると考えています。

自分の「いのち」は授かったものということを、身体で感じとり、毎日、感謝しながら生活できれば、素晴らしい人生が送れると思います。それには、まず、大自然の見えざる偉大な力のお陰で生かされていることに気づくことです。