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廃校舎の活用-「森の巣箱」と「みどりの時計台」-

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年11月8日

廃校舎の活用―「森の巣箱」と「みどりの時計台」―

早稲田大学教授 宮口 とし廸 (とし=にんべんに同)
(第2739号・平成22年11月8日)

ここ数年廃校舎の活用例に関心があり、訪ね歩いている。その中から高知県の二つの興味深い事例を紹介したい。   

津野町の床鍋地区は支流の谷あいに孤立して存在する集落であるが、旧床鍋小学校舎の活用の議論が10年前ころから本格化し、専門家や高知大の学生を交えたワークショップの中から、集落コンビニと宿泊施設に改造し、夜は居酒屋になるスペースを併設するというすばらしいアイディアが生まれた。校舎の改修は、県・旧葉山村の補助金のほかに地区の負担も加えてなされ、「森の巣箱」というしゃれた施設が2003年に誕生した。

実際にお邪魔してみると、夜には地区の人が三々五々集まり、簡単なつまみとビールで明るい会話が飛び交い、数少ない若者も交じって楽しい時間が生まれていた。筆者は以前この欄で「一集落一カフェ論」を唱えたが、まさにそのよい見本に出会い、嬉しかった。泊まった若者がここで結婚式を挙げたという嬉しい話もある。勤務は半ばボランティアで、県道の草刈りの請け負いなど経営を支えるための作業もあるが、それがまたこの集落の結束を支えているに違いない。なお、沖縄の小集落には、古くから、「共同売店」という集落が経営する店がかなりあることを考えれば、この形態は真剣に検討されてよいと思う。

山の斜面に集落が点在する厳しい過疎山村の代表ともいえる大豊町の旧川口小学校の校舎は、2006年から「みどりの時計台」という、アウトドア派のための宿泊施設に活用されている。体育館の緑色の美しい時計台に、外部から吉野川にラフティングに訪れていた夫妻が目を留め、町に借用を願い出て実現したものである。ベッドと畳を入れた教室が客室になっているが、学校はできるだけそのままにという住民の要望から、廊下や教室には賞状額や教材・図書、児童の作品などがそのまま置かれていて、いい雰囲気を醸し出している。

夫妻は旧職員室に住み、トイレと風呂のみの改造で、宿泊客は給食室で自炊するのが基本である。グランドでバーベキューという客も多い。夫妻ともラフティングのインストラクターとしても働いていて、学校では夫人が校長先生、夫君が用務員という肩書である。改修には数百万円の貯金をはたいたとのことであるが、ユニークな力を持つ人の個人的な投資で、校舎のユニークな活用が生まれた。このようなシンプルな活用もあり得ることを、ぜひ多くの人に知ってもらいたいと思う。