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さまざまな補助人の価値

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年2月8日

早稲田大学教授 宮口 侗廸  (第2708号・平成22年2月8日)

山口県長門市の山間に、ひなびたいい雰囲気の温泉旅館街を持つ俵山という地区がある。例にもれず過疎化が進行しているこの山間地区で、6年前、中堅の男たちが、グリーンツーリズムによる地域活性化を目指して立ち上がった。

まず青年部が実働部隊を組織し、市役所勤務のメンバーから情報を得て、平成17 年度の国交省地域振興アドバイザーの派遣を申請した。そしてその白羽の矢が立ったのが、愛知県豊根村で山村留学を手がけてこられた黍嶋久好氏と遠藤聰氏そして筆者であった。関係者の意識は高かったが、現地で筆者らが直感したのは、その活動が住民の中に大きく広がっていく困難さであった。そこで黍嶋氏と筆者は、「地域づくりインターン事業」で学生が入ることで、地域の人がすなおに活動の輪に加われると、強くアドバイスした。

反応は敏感で、翌年度直ちにインターン事業に応募し、3年間、学生を受け入れた。グリーンツーリズムというお題目には二の足を踏む人も、学生が来るから泊めてやってもらえないかと頼まれれば、何とかしてやろうという気になりやすい。そして学生を泊めることが意外に楽しいことであることがわかると、その空気はすぐに地元に広がる。平成19年には東京都立高校の修学旅行を受け入れ、20年度と21年度は「こども農山漁村交流プロジェクト」の山口県モデル地区として、延べ400名が宿泊するという、驚くべき展開になった。21年5月には「NPO法人ゆうゆうグリーン俵山」が発足し、受け入れ態勢も整った。集落での棚田オーナー制や農家レストランの試みも始まっている。

筆者は昨秋、アドバイザー事業のフォローアップのために4年ぶりに現地を訪れ、このすばらしい展開を確認できて、この上なく嬉しかった。すっかり成長した関係者から、学生との交流がいかにその後の展開に役立ったかを、何度も聞くことができたからである。地域は、人が力をつけることによってしか再生しない。そして他人との交流がそのエネルギーのもとになる。専門家や学生との交流で行政職員がいかに成長するか、さまざまな補助人の価値を改めてかみしめてほしい。