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協働をつくり出す人材の大切さ

印刷用ページを表示する 掲載日:2004年11月15日

早稲田大学教授 宮口 侗廸  (第2500号・平成16年11月15日)

10月半ば、和歌山県で開催された全国過疎シンポで総務大臣賞を受けた沖縄県東村の地域づくりは、今から27年も前に、村民総参加で6年かけてつくった「村民の森つつじ園」に始まる。ここでの「つつじ祭り」に多くの人が来訪するようになる中で、都市との交流というキーワードが、はっきりと方向づけられた。このつつじ園は、平成14年にはバンガローやキャンプ場を持つ「つつじエコパーク」に発展し、エコツーリズムの拠点となった。翌15年には、修学旅行や総合学習を中心に1万5千人が宿泊している。

東村には、国指定の天然記念物「慶佐次湾のヒルギ林」があり、密生するマングローブをカヌーでゆっくりと観察することができる。この世話をしているのが平成11年に設立された「東村エコツーリズム協会」で、農家や漁師も重要メンバーとして参加し、もと旅行社勤務でUターンした島袋さんが会長を務め、インストラクターの先頭に立っている。生徒たちは、腕のいい漁師や名人農家のネットワークのもとで、豊かなヤンバルの自然を背景にした豊富な体験を味わうのである。

早稲田大学の「自然人クラブ」というサークルが、平成2年から毎年滞在し、パイン畑の作業と村民との交流を続けているのも嬉しい話であった。コーヒーの自家栽培のためにIターンした人のカフェもあり、自ら体験型民宿を開いた家もある。この村では、自然を知り尽くした多彩な民間のワザ師が、行政が後押しする強いネットワークで結ばれて力を発揮し、小さいが持続的なビジネスが派生している。このすばらしい協働を支えてきたのが村の企画課長の山城さんであるが、本人の資質と共に、氏が20年間企画畑で働き続け、幾多の人材との交流を続けてきたことがパワーのもとになっていると思う。

能力ある人に活躍の場を用意することによってこそ、人も地域も育つ。過疎シンポの分科会でも、適材を数年で配置換えするのは問題だという発言があった。地域の力を結集し、協働による驚異的なパワーを生み出す人の存在が、いかに大事かということであろう。