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がんばれ、地域放送

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年2月4日

評論家 草柳大蔵(第2386号・平成14年2月4日) 

地球人口のちょうど50%が慢性的な栄養失調というのに、今年のお正月のテレビ番組はグルメまたグルメといった調子だった。地球人口のちょうど70%が識字力を欠いているというのに、お正月番組はタレントどうしの無芸などんちゃん騒ぎだった。どう考えても世紀末現象としてしか考えられないが、この6月にはNHKを除く全民間放送会社がBS(衛星放送)のための増資に踏み切る。昨年じゅうに民放全社でデジタル放送のために1兆円の設備投資をしたのだが、さらにBSに増資するのは、電波を流す費用(これを搬送費という。英語ではディストリビューション)にうま味があるからだ。現在の地上波のネットワークは、全国に流そうとすると、ほとんどNTTの電話回線を使ったり、衛星で流したりしている。この搬送費が各局で年間平均130億円ぐらいかかっている。これから本格化する放送衛星だと搬送費は5億円まで下がる。このため生じる125億円の差額をどのように使ってゆくかは、衛星放送にどの程度の広告収入が入るかとの兼ね合いである。

現在、テレビの平均利用時間は1日に3時間53分である。65歳以上の人になると平均8時間という数字が出てくる。この映像受容時間に衛星放送のデジタル波が介入してくるのだから、よほど性根をすえてテレビとつきあわないと、オトナまでが活字離れを起こし、タレント用語で話すようになるかも知れない。

一方、地方行政はIT技術を導入して事務処理の合理化をすすめるのは勿論だが、地域住民はITやEメールで情報的に連繁した形に仕上がりつつある。情報公開の請求は日常茶飯事になるだろうし、住民による行政協議会の要請も強くなるだろう。こうした流れの中で、議会中継や首長など行政責任者の定例会見や行政と住民の関係性を報道する地域テレビが必須の装置となるであろう。町村合併で体力をつけた自治体は文化政策としてこれを考えるべきではないか。