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新しい日本のメッセージ

印刷用ページを表示する 掲載日:2001年12月17日

評論家 草柳大蔵(第2380号・平成13年12月17日) 

米カルフォルニア州のシリコンバレーでは「にわか成金症候群」が蔓延しているという。ITのバブルが弾ける以前に、株式公開で資産をふやした“にわか成金”たちが、莫大な金融資産に子どもたちがスポイルされるのをおそれ、寄るとさわると、どうしたら上手に相続させることができるかと、相談しているという。「子ゆえに迷う親の闇」は、いずこも同じで、英誌『エコノミスト』でこの話を知ったときはおかしかったが、どうやらシリコンバレーの金持ちたちは、子どもが職業上あるいは学問上の一定水準乃至は業績を挙げたときに資産の一部を譲るということに落ち着きつつあるという。

「ジャンクフード(いい加減な食べもの)を立ち食いしながら金を溜めたアメリカが、子どもの心配に加えてテロとの戦いを始めるなんて、気の毒を絵に描いたようなものだ」と、ひがみ根性マル出しでいう人もいるが、そんな悪態は悪態として、日本にはおもしろいメッセージの発信点があるようである。

1999年の統計によると、日本人の食の外部化率は44.3%で、食堂やレストランなど外食産業の売上げは28兆千億円に達するという。このほか、スーパーやデリカショップで調理済みの食材を求め家庭で煖めて食べる人が多く、この食材を売るところを中食産業というのだそうだが、これが食生活の39.1%を占め総売り上げが5兆8千億円に達する。両方あわせると約34兆円の大産業になり、日本人の食生活の83.4%は外食産業と中食産業で占められていることがわかる。残りの16.6%を、主婦が食材から“お料理”をつくっている勘定になり、衣食住の中でも食の字はごく小さくなっているのである。

ところが、日本人の食生活もアメリカ並みにジャンク化したかといえばさにあらず、大分県の湯布院や山形県の上の山の両温泉のように、食材も料理法も「土産土法(どさんどほう)」を守って繁昌しているところもある。これらを拠点に新しい日本を考える年が明けようとしている。