評論家 草柳大蔵(第2292号・平成11年11月1日)
町村を訪れるたびに首長や財務担当者から聞かされた「合併しなければ交付税を削減する」という自治省の姿勢が、朝日新聞の記事(10月17日付朝刊)であきらかにされた。読んでいない人のために要約すると、「小規模町村の交付税削減」はすでに98年度からスタートしていて、人口4千人を補正の上限とする新たな算定方法を「商工行政費」「企画振興費」「河川事業などの土木費」に適用し、人口が4千人未満の464の町村で合計37億円を削減、99年度は削減の対象をさらに「消防費」「義務教育以外の幼稚園などの教育費」などに広げたほか、「農業行政費」も農家150戸で頭打ちになるように見直し、544町村で38億円を削減した。2000年度は「社会福祉費」「高齢者保健福祉費」などにも上限を定めるという。
98、99の両年度で削減された額は75億円になる。交付税特別会計の借入金が99年度末で29兆6千億円だから、削減額は“雀の涙”みたいなものだが、削減された町村にとっては、“青天の霹靂(へきれき)”であろう。明治以来、地方行政の根本理念であった「あまねく、ひとしく」も「無い袖は振れぬ」という財政の壁には影が薄くならざるをえないとも受け取れる。もっとも、自治省にしてみれば、町村合併によって地方自治体の体力をつけることが、これからの「あまねく、ひとしく」の姿につながるという解釈をしているのかも知れない。
ただ、現実問題として考えてほしいのは、前回この欄で触れたように、たとえば鳥取県の西伯町を核として4か町村が「介護保険」の地域連合を組んだように、これからも「生活廃棄物の処理」(ダイオキシン対策)や「高齢者対策」などテーマ別に地域連合を組むケースがトレンドとなりつつあるのだが、交付金を削減される人口4千人以下の町村が連合から疎外される心配が出てくるのではないか。地域連合は民間から湧き出た知恵である。角(つの)を矯(た)めて牛を殺すことがあってはなるまい。
なお、この鳥取県西伯町等の地域連合について、前回(10月4日付、2288号)の記事では、結成してすでに「2年」が経過していると説明しましたが、「2ヶ月」の誤りでしたので、訂正しておきます。