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まちづくり手法のカネをかけない転換策は?

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年7月18日更新

九州大学名誉教授・弁護士 木佐 茂男(第2967号・平成28年7月18日)

NPO法人公共政策研究所発表の全国の施行済み自治基本条例一覧(更新日:平成28年5月12日)によると、本稿執筆時点(2016年6月30日)で市町村の自治基本条例(本コラムではまちづくり基本条例を含めて、 単に基本条例と総称する)は349ある。全市町村数の20%程度だが、今、改めて検討するのは、基本条例の運用状況であり、真に生きていないケースがあるとすればその代替策を模索するためである。

基本条例がこのうえなく機能している自治体もある。しかし、他方で、魂を込めて作ったはずなのに、ほぼ完全に無視していると思われる自治体もある。 活気があり基本条例があっても成長が止まる時代であるから、傾向的には自治体経営が不首尾にみえる市町村の多くは未制定である。

どの自治体も、まちづくり、地方創生事業、少子高齢化対策、空き家対策と喧しいものの、それらの政策課題を恒常的に自治基本条例に照らして練っているのか。もっとも、 これらの政策課題に向き合うだけの条文が用意されていない基本条例もあろうし、基本条例を作ったときに基本条例を駆使すべき場面を予測しなかった自治体もあろう。

基本条例がないものの、最近人口が社会増に転じた、あるいは社会減に歯止めがかかった自治体もある。これらの自治体は、是非、基本条例等の仕組みを設けて勢いが後退するのを避けて欲しい。

住民が現実的イメージを浮かべにくいお飾り的な基本条例に過ぎない場合、より実質的な住民の意見・意向の反映方策はないか。住民も自治体内の諸団体幹部もそう暇ではない。 すでに本コラムでドイツやスイスの例を何度も紹介したが(2508号、2693号)、金をほぼかけずに、役場の透明度と職員の「懸命力」を引き出す技を探したい。それは、議員、首長、 常勤や非正規の職員も含めて、氏名、担当の職場・地位、異動した職場歴、笑顔の顔写真、直通電話番号、電子メールIDの役場ネット上での公開である。上記の国では、写真の掲載には若干ばらつきがあるが、 人口が1,000人台であれ、これらデータの公開はかなり徹底している。経歴や顔写真がすでにさまざまな意味での外部評価の制度、いや武器となる。議員や職員は、その生き様が評価され、 データ公開が彼らにとり自分の存在意義の再検討の機会や自己磨きの最適の道具になろう。いささか理解しにくい「協働」で住民(や行政?)を縛るよりも、議員を含む全スタッフの情報公開をすれば、 自ずと、本来すべきことを行うしかない「自治」体になっていくのではなかろうか。