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平均人口差80倍の基礎自治体

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年12月21日

平均人口差80倍の基礎自治体

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男(第2703号・平成21年12月21日)

基礎自治体の平均人口が、合併後の日本より約3倍も多い韓国で、さらに合併を進める動きが出てきた。政府は、将来的には地方自治体の一層制を目指しているという。一体、何が起きているのか。

大ざっぱに言って韓国には230ほどの基礎自治体がある。2008年の人口では基礎自治体の平均人口は21万人である。日本は2009年現在で東京23区を含めて平均が7万1千人になる。韓国では1998年頃の基礎自治体3市の合併をもっておおむね市町村合併はひと区切りついたと言える状態にあった。

ところが、この(2009年)12月7日に釜山(プサン)市の西隣にある昌原(チャンウォン)、馬山(マサン)の両市の議会が、11日に鎮海(チネ)市の議会が合併に賛成する議決を行った。11年ぶりの基礎自治体合併となり、来年7月1日に人口108万人の新市が発足する。

ちょうど、その11日に筆者は釜山市内の大学で日本の道州制を中心とする地方分権問題の講演をしており、翌12日の夜、釜山市の元副市長から前日に議決があったことを聞いた。同氏は、韓国での自治体一層化の動きは続くだろうという。住民の行動範囲が広くなり、電子化が進んで民主主義の確保の上でもあまり問題がなくなったというのだが。大学研究者の多くは自治体の広域化に反対し、一部地域の住民は住民投票を求めている。

日本では、2008年頃から今年の6月にかけて道州制論議は頂点を迎えた。だが、日本のこの間の市町村合併で、住民から良かったという声をほとんど聞かない。私は、この種の問題では、100年もの間ほとんど市町村合併がないスイスをつい思い起こす。多くの市町村も郡も州も連邦も憲法を持ち、平均人口2千5百人程度の基礎自治体が広域行政需要には広域事務組織で責任をもって対応している。「完全自治体」などという言葉とは全く無縁の国である。平均人口にしてすでに80倍も異なるスイスと韓国。その中間で、基礎自治体の規模では韓国に近い日本。最近、わが国の町村関係者から改めてスイス型の地方自治の仕組みを徹底して勉強したいという声が出ている。政権交代で道州制の動きはどうなるのか。地域主権と道州制・基礎自治体の関係について町村からの具体的な構想発信が必要であろう。