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<シューカツ>への気合い

印刷用ページを表示する 掲載日:2005年5月16日

九州大学大学院法学研究院教授 木佐 茂男 (第2519号・平成17年5月16日)

シューカツ。美味しそうな名前だが、これはお菓子ではないし、食堂のメニューにもない。最近の若者は、何でも短縮語にしてしまうが、シューカツとは、特に大学生の「就職活動」の略語である。

学生の就職戦線は、すでに大学3年生の秋から始まっている。今年度のゼミ初日には、4年生の3分の1が欠席した。学生の企業訪問と内定した企業の拘束によるものだ。もちろん、能力の伸びる大学3、4年生時に、企業の青田買いで教育を妨げられるのは迷惑な話であるが、採用する企業側の意気込みには圧倒される。

先頃、地元の某大企業の人事課長が、私のゼミまで直接乗り込んできて単独の説明会を開いて下さった。その方の人柄と心意気が学生の心に響いたのか、同社を希望する学生が多数現れて、優秀な学生たちが内定をもらった。

一方、自治体のシューカツはいかがだろうか。1人の職員の生涯賃金が約3億円といわれて久しいが、それだけの投資をするという意識をもって、首長や人事担当者は必死に努力しているだろうか。

今も、新聞紙上では現職市長が賄賂で縁故採用したとして有罪となる記事が後を絶たない。職員数千人を抱えるある巨大自治体の古参議員は、3分の1はコネ採用だと公言する。中には、職員採用試験で、昼夜を分かたず、首長と職員が膨大な時間とコストをかけて能力を見極めている小規模自治体もあるにはあるが、まだまだ例外であろう。

私事ながら、次男が今年企業に就職した。社員の息吹が聞こえてくるような活気あるホームページを持つ企業だ。研修後の配属先は第2希望となったものの、人事担当者は、新人である息子が納得するまで、丁寧に第1希望先を避けた理由を説明してくれたという。この企業は、おそらく「人」を「財」とみて大切に育てているのだろう。

青田買いを推奨はしないが、自治体は、その気合いを少し見習った方がいいのかもしれない。PR活動、積極的で独創性のある採用のあり方を探ることは重要だ。入庁後の人事も同様、9割の職員が不満を抱くような人事処遇を改善しようとしない組織に魅力があるはずもない。1人3億円をドブに捨てる人事を繰り返さぬため、自治体の「サイカツ」(採用活動)の改革が迫られているのではないか。