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求められる美意識?日本酒とお茶?

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年7月10日

静岡文化芸術大学学長・東京大学名誉教授 木村 尚三郎
(第2567号・平成18年7月10日)

国土交通省主催の「外国人にとってのおみやげコンテスト」が、昨年に引きつづき本年3月に行なわれ、各国大使館関係者が審査委員として迎えられた。そこで「食品部門」の金賞を獲得したのは、「ミニ菰樽」(兵庫県)である。300ミリリットルの日本酒が入ったミニ酒樽を、熟練した職人が大きな菰樽と同じように丁寧に巻き上げたもので、美しい。値段は、1,359円から2,100円までの三通りとなっている。

日本食レストランの普及とともに、日本酒の需要も海外では右肩上りに伸びているが、いつも問題になるのは、一升瓶のかっこ悪さである。昨年の台湾の審査員からは、サッカーボールの形や相撲の取り組み姿の日本酒容れがあったらいいのに、という提言もあった。日本酒メーカーも味ばかりではなく、デザインにも気を配るようになれば、日本酒離れの日本の若者にも訴えかける力が強くなるのに、と思う。

食品部門の銀賞は、煎茶「おひなさま~日本茶ギフト~」(福岡県)であった。50グラムのお茶2つで2,100円であるが、千代紙で袋を包み、おひな様のデザインが施されている。健康志向とともにヨーロッパで関心と消費が高まりつつある日本茶を、舌と目の双方で楽しんでもらう工夫が評価された。

銅賞を取ったのも、日本酒である。こちらは愛媛県酒造協同組合のもので、750ミリリットル入り、3,150~3,675円である。漏斗(じょうご)を逆さにしたような、優美な容器もすてきである。日本酒と日本茶が、外国人に人気となりつつあることを如実に示す審査結果であった。

日本側審査委員にとって意外だったのは、和菓子の不評である。欧米・アジア諸国すべての外国側委員から、「甘すぎる」と異口同音に感想が述べられた。不馴れの問題もあろうが、甘味を抑え、ナッツ・香辛料などを加え、新しいデザイン感覚の工夫を進めれば外国人・日本の若者を問わず受け入れられていくだろう。いま求められているのは、現代にマッチした美意識である。