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なでしこジャパン

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年11月19日

千葉市男女共同参画センター名誉館長・NHK番組キャスター 加賀美 幸子
(第2820号・平成24年11月19日)

今年の日本を勇気づけ、誰もが心動かされた「なでしこジャパン」の活躍。季節は進み、冬が迫ろうとしているが、『万葉集』の時代から人々は、秋の花・なでしこに 心を寄せてきた。「野辺見れば 撫子の花咲きにけり わが待つ秋は近づくらしも(詠人不知)」と歌われているように、夏の頃から咲き、もっとも早く、秋に先駆けて咲く花として、 万葉の時代から親しまれてきたのが撫子の花。子を撫でるように、姿やさしい可憐な花。にもかかわらず、かんかん照りの川原でも、風を受けて颯爽と咲く芯の強さ。 「カワラナデシコ」の名と共に、長い間愛されてきた。『万葉集』には「撫子」が26首詠まれているが、その内、大伴家持の歌が11首もある。「撫子の その花にもが 朝な朝な  手にとり持ちて恋ひぬ日無けむ」(あなたが、あの撫子の花であったらいいのに。そうしたら、毎日毎日手に取って、恋い慈しまない日はないだろうに)坂上郎女の長女・ 坂上大嬢への恋心を撫子に託して歌っている。家持が惹かれ求めていたのは、撫子のように、やさしく芯の強い女性であったのだ。清少納言も『枕草子』の中できっぱりと言う。 「草の花はなでしこ。唐のはさらなり、やまとのもいとめでたし…」(草の花は、なでしこが良い。唐なでしこは勿論だか、日本のなでしこも、とてもすばらしい…)

細い枝だが、しなるように強く、決して折れたりはしないで跳ね返す。それが「大和なでしこ」と言われる由縁。やさしく芯の強い女性の代名詞だったが、一時期あまり 使われなくなり寂しかったのだが、アテネオリンピックで、サッカー日本女子代表の愛称が「なでしこジャパン」に決まり、それも約2700通の応募の中から選ばれたのだった。 「日本を代表する女子チームに相応しい愛称、プレーする選手たちの夢や目標に相応しい愛称」上田栄治監督の言葉であった。その後の「なでしこジャパン」の活躍…。 上代から続く強くしなやかな生き方の根元が、今年また確かめられた嬉しさである。