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地域再生は連帯から

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年4月14日更新

NHK国際放送局長 今井 義典(第2435号・平成15年4月14日)

地域再活性化のためのNPOやコミュニティビジネスの活動が盛んになっている。こうした運動が日本社会に定着し、発展するためのカギは、「連帯」だと思う。

ロンドンのターミナルの一つ、ウォータールー駅から歩いてほんの2、3分のところにあるビルを覗いてみよう。2階に上がると南北に100メートル余り、幅40メートルほどの見通しのきくフロアがあり、その真ん中の通路の両側にオフィスが連なっている。仕切りは本棚か胸までのパティションだけ、一見すると一つの会社のようだが、実は全て別々の団体の本部なのだ。

オープンスペースに共棲することで、目的も毛色も違う団体が互いに「触媒」として刺激しあい、化学反応を起こして、新しい知恵を生み出すのが狙いだ。それぞれのニーズ、パワー、ネットワークが有機的に活きる。15ほどの団体の中には、青少年のための参加型のチャリティー団体があるかと思えば、地域社会再生のプランをテーラーメイドで提案するシンクタンク、さらには崩壊家庭を支援するグループ、学校改革をハード(校舎)とソフト(教育内容)の両面から提案する団体、はては国の外交政策に個人の考えを反映させようというNGOまで同居している。

趣旨も基盤も千差万別で、NGOというより「企業」といったほうがいいような組織も少なくない。「ソーシャル・アントレプレヌール」(社会的起業家)と呼ばれるのがそれだ。市場経済を利用して利益をあげる点はビジネスそのものだが、その利益は株主のものではない。すべて社会再活性化への再投資に向けられるのだ。

このビルからイギリスの霞ヶ関、ホワイトホールまで、テムズ川の橋を渡ればほんの数分で行ける。国の政策への影響力がうかがえる。イギリス全土に広がっている700ほどの団体とインターネットでつながっていて、地域レベルのノウハウを共有し、支援しあうネットワークもできている。

遅々として進まない「政官」主導の構造改革に痺れを切らして、「民」主導で、草の根から社会を改革し再活性化しようとする動きが世界で進んでいる。