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地域イベントの経営学

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年8月28日

作新学院大学名誉教授・とちぎ協働デザインリーグ理事 橋立 達夫
(第3011号・平成29年8月28日)

近年、地域おこしのためのイベントが各地で様々に行われるようになった。イベントは通常、短期的な取組であるが、それを定常的な地域おこしに活かすためには、何を考えておくべきか。

イベントは、資金、資材、マンパワーなどを注入(インプット)して実施され、その結果は、来場者数(主催者側発表○○人)という結果(アウトプット)で表される。そしてイベントの成果(アウトカム)として、内的には、実行者の得る知識、経験、達成感、人の和、外的には来場者の満足、地域の知名度とイメージアップ、来場者の消費による経済効果などがもたらされる。しかし、これらの成果は一過性のものである。本当の成果は、イベントを実施することによって地域に何がもたらされるかということである。地域おこしに資する力を継続して生み出すためには、より大きな目的意識が必要なのである。

イベントは、地域に新しい文化の風を起こす試みである。文化が閉塞すれば、地域はやがて滅びてしまう。伝統行事であっても、常に清新な気持ちで臨むことが望まれるのである。イベントは、外部からの出演者、出展者という、地域に新しい文化の風を吹き込む人が集まる機会であり、その力を持続的に地域おこしの力として内部化することを考えておくべきである。また来場者が、単なるお客様ではなく、自らが積極的に参加し、主催者と共鳴して活動を担うサポーターになってくれるような仕組みをつくることも重要である。

こうした人を惹きつける魅力を持つためには、活動によって、どんな地域にしたいかという明確かつ共感を得ることのできる意義を明示する。そしてそれが広く理解され、活動に加わることが誇りとなり、多くの人が参加への意欲を持つという状況をつくることを、初めから意図しておくべきである。さらにイベントの実施により収益を上げ、それを新たな取組の資金に当てるという成長の仕組みをつくることも考えるべきである。イベントの効果を定常的な地域おこしに生かすために経営センスを磨いていこう。