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活き活きした地域を維持するために ―地域内交流社会再構築の薦め―

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年2月16日

作新学院大学総合政策学部教授 橋立 達夫 (第2909号・平成27年2月16日)

石破地方創生・国家戦略特別区域担当大臣が、鹿児島県鹿屋市の柳谷集落(通称「やねだん」)を泊りがけで尋ねたことが全国ニュースで報道された。 大臣は、行政に頼らず小さな地域ビジネスの収入により地域に一番必要とされる事業を推進し、さらに芸術家を招致して地区内の文化の閉塞状況を打破し、 活き活きとした生活を営む地区を絶賛されたそうである。情報化社会の中で、このように地域が直接全国と、さらには世界と結びつくようなダイナミックな交流の可能性が芽生え、 それを追及する動きが全国に広がっている。

しかし忘れてはならないのは、地方創生は、全国の平凡な小地域の活性化の上に成り立たなければならないということである。そしてその時必要なのは、もっと身近な社会の中での交流である。

日常生活圏内の交流は、昔は盛んであった。たとえば周辺農家から原材料を買って加工を行っていた商店街の和菓子屋さん、住宅街に訪れる農家、漁家の行商などである。 廃れつつあるこうした関係を再構築することにより、日常生活圏内での比較的頻度の高い交流で、地域文化の閉塞感を打破し、活き活きとした地域を再生・維持することを考えたい。

高齢化と商店の撤退により、いわゆる「買い物難民」が生まれている住宅団地と近郊農山漁村との連携、農商連携、農工連携、商工連携を組み合わせた6次産業化、 核家族化の進展で孤立しがちな子育て世帯と子育て卒業世代との連携などである。衰退した商店街が、消費者である市民サポーターの協力で立ち直った例や、 高齢過疎化の進む農山村の環境保全を担う市民の里山応援団の例もある。地域内の異業種の担い手同士、生産者・販売者と消費者、高齢者と若者など、 それぞれが互いに持ち味を活かした結びつきをつくることにより、活性化のパワーが生まれてくる。

『里山資本主義』に示されたプライスレスの心のこもった交流、地域通貨による循環経済、草の根起業家など、 まさにこの日常生活圏内の交流の重要性と有効性を示している。「やねだん」の暮らしを根底で支えているのも身近な交流である。