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文書検索15秒

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年7月13日

作新学院大学総合政策学部教授 橋立 達夫 (第2686号・平成21年7月13日)

九州地区自立町村ネットワークの総会で講演をさせていただいた。九州・沖縄の中で敢えて自立の道を選ばれた50町村の首長さんの勉強会である。個性と熱意にあふれる町村長との触れ合いの中で、これこそが自治だという手応えは明らかに小さい町村の中にあることを改めて実感する機会であった。

さて、講演の帰路に長崎県時津(とぎつ)町を訪ねた。人材育成、漁業振興、コミュニティ振興など、優れた取組みをされている町であるが、中でも瞠目すべきは文書管理システムのみごとさであった。平成12年に導入された「行政ナレッジファイリング(AKF)」は、庁内に定着し大きな成果を上げている。個人用の書類ファイルを一切なくし、書類はすべて、共用のファイルボックスに定められたルールの下で保管されている。そのため、書類が必要になった時には、いつでもだれでも、たちどころにその書類を見つけることができる。長期的な文書保管や廃棄もルールに従って、整然と行われる

システム導入によって、文書検索の所要時間は導入前の平均3分から15秒に短縮された。1人年間72時間を節約でき、160人の町職員の節約の総量は、6人の雇用に相当するとされている。しかし見受けた印象から言うと、効果はその何倍もある。町民からの情報開示請求があった場合は、ほとんどがその場で応じることができる。資料のやり取りや在処に関する問い合わせの会話が全くなく、机の上や引き出しに余分な資料や私物を置かないことによる静謐で整然とした職場環境から、仕事全体の能率が格段に向上していることが感じられる。心なしか職員は職場に誇りを持ち、姿勢や容貌もキリリと引き締まっているように見える。

国を始めとして、自治体行政に経済効率ばかりをもとめる今日の風潮には大きな疑念を持つが、時津町の取組みは、効率的行政のあり方を示していると言えよう。ちなみに筆者の机はいつも資料が山のように積み上がり、資料探しに明け暮れている。瞑目。