ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > コラム・論説 > 「福祉」×まちづくりで仕事を創る

「福祉」×まちづくりで仕事を創る

印刷用ページを表示する 掲載日:2025年7月14日更新

東洋大学国際学部国際地域学科教授 沼尾 波子(第3325号 令和7年7月14日)

 人口減少が進む地域において、人材確保は喫緊の課題である。2025年には団塊世代が後期高齢者となり、介護・福祉人材の確保は待ったなしとなる。低賃金・重労働といわれるこの分野で、いかに人材を確保し、持続可能なサービスを提供するか。

 長崎県長与町にある社会福祉法人ながよ光彩会の取組は、福祉の仕事や働き方の概念を変えるものだ。特別養護老人ホームかがやき、就労継続支援B型事業所 GOOOOD KAGAYAKIのほか、「みんなのまなびば み館」、JR長与駅でGOOOOOOOD STATIONの運営など、多角的な事業を展開する。

 特別養護老人ホームかがやきでは、入所者の自己実現に向けて職員がさまざまな工夫をする。その背景には、職員の自己実現を形にする職場環境がある。ゼロ歳児からの子連れ出勤を認めているほか、副収入を稼ぐことも可能となっている。赤ちゃんのいる老人ホームの空間は、高齢者を元気にするという。

 GOOOOD KAGAYAKIは地域と連携、企業が出した木の端材でのフラワーベース製作、コロナ禍で使用された飛沫防止アクリルパネルを回収してキーホルダーを製作するなどのアップサイクルに取り組むほか、コーヒー豆の焙煎・販売も行う。地域資源を活用した循環型社会構築への貢献、コーヒーをこよなく愛す職員が取り組む香りとコクのある美味しいコーヒーづくりを、多様な就労の形で実現できる環境が整えられている。

 町の中心部で運営する「みんなのまなびば み館」は、「まちのリビング」をコンセプトにした地域の拠点である。職員や地域の人々が、自分の得意なことを「せんせい」として「きょうしつ」を開く。地域で人々が出会い交流する場を創出するとともに、一般の人には縁遠い福祉施設で働く人々が、地域とつながり、交流する場にもなっている。

 2023年9月から、正午以降無人となるJR長与駅の管理も担う。車いす利用者をはじめ、障がいのある方も安心して駅を利用できるよう、集改札や介助を行うだけでなく、駅舎内のホールで、カフェやショップを運営。就労支援事業で作ったコーヒー等も販売する。

 今後は行政が管理する他の施設での指定管理も視野に入れ、ながよ光彩会は地域のさまざまな場面で福祉専門職が関わり、地域の暮らしや仕事のなかに「福祉」が当たり前にあるまちづくりに貢献している。

 若い世代の挑戦を応援し、創造的な仕事を生み出す「福祉」×まちづくりの職場に、人口減少時代の新たな働き方の可能性をみた。