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地方創生の10年

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年3月18日

ジャーナリスト 松本 克夫(第3273号 令和6年3月18日)

 人口減少にブレーキをかけようと地方創生(まち・ひと・しごと創生)がスタートしてからほぼ10年。結果はどうか。出生数は減少し続け、合計特殊出生率は2022年に1・26と過去最低を記録した。コロナ禍が響いているとはいえ、目標とした若い世代の希望出生率1・8との開きは大きい。出生率が全国一低い東京への人口集中の是正も進んでいない。2023年の東京圏は12・6万人の転入超過となり、一極集中はむしろ加速している。人口の動きは長時間労働、育児と仕事の両立難、非正規労働者の結婚難など産業社会の要因が大きいから、自治体主体の地方創生にあまり責任を負わせるわけにはいかないが、少なくとも人口に関する限り地方創生が狙い通りの成果を上げたとは言い難い。

 そもそも人口減少に歯止めをかけるための地域活性化策は自治事務の核心といっていい。果たして、国が旗を振って、拙速で全国一斉に自治体に人口ビジョンと総合戦略をつくらせるやり方がよかったのかどうか。KPI(重要業績評価指標)を定め、計画─実行─評価─改善のPDCAサイクルを回せと細かく指示するなど統制色の強い手法だったから、面倒と見た自治体の多くはコンサルに頼った。コロナ禍の影響を受けた第2期にはテレワークの推進が加わったが、まだ地方への太い人の流れをつくり出してはいないようだ。

 10年前、政府を地方創生へと突き動かしたのは、民間有志で構成する日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)の報告書(通称増田レポート)である。自治体別の長期人口推計も公表し、ほぼ半分の896市区町村が「消滅可能性都市」になると名指しして衝撃を与えた。10年後のことし、その増田氏を含む人口戦略会議(議長・三村明夫日本製鉄名誉会長)が「人口ビジョン2100」と題する提言をまとめた。日本の人口を8000万人で定常化させるための戦略を提案している。追って、市区町村別の将来人口推計の最新版も公表するという。自治体の存続を巡って新たな論議を巻き起こしそうな気配である。