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地元の循環を創り直す 先行投資、人材配置を!

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年12月18日更新

一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3264号 令和5年12月18日)

 そろそろ本気で地元の循環を創り直す時代です。全国を旅すると、地方都市の郊外にどこでも同じような大型ショッピングセンターとロードサイドショップが並んでいます。一見、華やいで見える風景ですが、商品の多くは海外や域外から大量に輸入されています。その本質は「借り物の豊かさ」であり、域内の所得も流出していくのです。

 これから実現すべき循環型社会は、地元の生態系が太陽と大地の恵みにより創り出す「自然の利子」の中で暮らしていくことが基本となります。地域に根ざした「本物の豊かさ」を目指す時代です。

 最近、『世界で最初に飢えるのは日本』(鈴木宣弘著・2022・講談社)という本が話題になっています。単純な食料自給率の低さに留まらず、農業の基礎となる飼料や種子そしてエネルギーも含めてあまりにも海外に頼る日本の現状に警鐘を鳴らしています。結局、「いざという時」に頼りとなるのは、私たちが暮らす国土の底力なのです。そして、その底力は、多彩な津々浦々が生み出す循環力が支えています。

 このように考えると、私たちは、改めて地元の循環の実相を学び直すところから再出発すべきではないでしょうか。例えば、私たちの祖先は、山や里、川、海に無数の地名をつけて、こまやかな生き物の分布や土壌そして漁場の違いを描き出し、有限の空間の中で無限に続く循環をデザインしていました。ミツバチをはじめとする昆虫との共生がなければ、農業も壊滅します。そして、土壌を中心に存在する細菌こそ、生態系も農業も、基底から支えているのです。

 多くの都道府県では、この10年で農業の担い手が半減する未曽有の危機に直面しています。そうした持続性危機にあるからこそ、地元の循環から創り直す産業と暮らしの構想が必要だと思います。急速に減少・高齢化する地域住民と協働するレンジャー的人材を全集落に現場配置して、地元の循環から創り直す調査や実践を始動してはどうでしょうか。10万の集落に事業費と人件費で各1,000万円投入すると年間1兆円となります。私たちの未来の生命を守る先行投資になると思います。