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集落支援員の活用

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年7月24日

法政大学名誉教授 岡﨑 昌之(第3247号 令和5年7月24日)

集落支援員制度は平成20年に開始されたので、地域おこし協力隊制度が始まる1年前になる。周知のように支援員には兼任と専任がある。自治会長などが兼ねる兼任支援員は全国で3,174人いるが、専任として活動中の支援員は1,997人で、6,447人の地域おこし協力隊員と比べると、その差は歴然としている。集落の点検、課題や将来に関する話し合い、地域づくり活動の支援などを目的に作られたこの制度は、集落の維持、活性化のために、もっと活用されていい制度だ。

全国過疎地域連盟では令和4年度の調査研究事業で、集落支援員の活用と実態について調べた。『町村週報』3243号でも概略が紹介されたが、市町村と支援員自身に対する詳細なアンケート調査と現地調査を実施し、報告書にとりまとめた。調査では、支援員の活動成果として、住民間や住民と行政間の連携が高まったとか、住民の孤立感や不安感が緩和したとの評価が高かった。支援員からも、住民と行政との連絡役を果たせた、話し合いにより集落の課題整理ができた、地域行事の復活や支援に関われたといった評価が多い。

調査に関わった筆者も、現場で活躍する集落支援員に出会った。北海道ニセコ町では、町全域を集落ととらえ、支援員の元中学校教員で移住者の青山智恵さんは、こどもの頃からニセコ愛を育てる教育支援やコミュニティスクール委員会事務局として重要な役割を担っていた。山形県酒田市旧八幡町大沢地区では、地域おこし協力隊としての力量を評価されて、引き続き支援員に採用された若い阿部彩人さんが、地元高校生とコラボしたり、地区のイベントの情報発信で力を発揮している。大分県宇佐市旧安心院町深見地区では、地元出身で企業をリタイアした深見輝人さんが、支援員としてまちづくり協議会事務局長を務め、地域活動はもちろん大分大学のインターン生の受入れ、公園整備、協育コーディネーターなど幅広い活動に従事している。

しかし集落支援員制度の課題も見えてきた。市町村からは、支援員の負担も多く、なり手がいない、支援員からは集落の課題が多様で対応しづらい、住民の関心が低いといった声がある。支援員や行政担当者に対する十分な研修や相互の交流プログラムの充実など、地域おこし協力隊に匹敵する支援員制度のさらなる充実が必要とされる。