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那須町 協働のまちづくりの15年

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年6月26日

温泉民宿街の手作り竹灯籠によるライトアップ
温泉民宿街の手作り竹灯籠によるライトアップ
(「湯本鹿の湯通り賑わい創出事業」)(栃木県那須町)

作新学院大学名誉教授 橋立 達夫(第3244号 令和5年6月26日)

栃木県那須町の「那須町協働のまちづくり推進規則」ができて今年で15年になる。この規則に基づき、翌年、「那須町協働のまちづくり推進交付金交付要綱」が生まれ、町内の全18地区で立ち上げられた「地域づくり委員会」(以下「委員会」)を始めとする町民活動団体に、地域づくり活動の資金を交付する体制が整えられた。またこの間、協働のまちづくりに関する職員研修と、各地区における事業説明会が行われた。

初年度から、ほぼすべての委員会から事業交付金の申請が出された。当初は、沿道に花を植える、土手の草刈りをするなどの共同作業が主流だったが、やがて、蛍の保護活動と鑑賞会、史跡の見直しと整備、希少植物を守り育てる、田んぼアートを作る、子ども食堂を立ち上げる、竹の活用を考えて荒れた里山を再生する、地区防災組織形成など活発な活動が展開されてきた。

一事業の継続年限の3年を超えると新たな事業申請を出さない委員会も出てきたが、そこに加わったのが、テーマ別の活動組織の活動である。全町的な芸術祭、マルシェや地ビール祭り、商店街活性化を目的としたラジオ局の立ち上げ、温泉民宿街のライトアップと「宵の散策事業」などが生まれている。

令和2年には、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディング(以下「CF」)による資金調達の道も開かれた。これにより事業交付金の上限(初年度80万円、3年合計180万円)の縛りがなくなり、大規模事業に挑戦する可能性が生まれている。残念ながら初めてのCFは、希望の3千万円の約1%しか集まらなかったが、その1%の資金が、その後の事業体制の改革や、広く共感を受けるテーマとそのプレゼンテーションの検討など、事業実現に向けての課題を乗り越える活動の呼び水になっている。

協働のまちづくり事業は、町職員にとっても、地域の活動に直接触れる貴重な機会になっている。そこから、委託事業とは異なり、一般管理費はもちろん人件費も出ない活動に熱心に取り組む方々をリスペクトするという、真の協働の基本となる気づきが育まれている。

 
写真キャプション

夜道が暗く人通りが少なかった夜の鹿の湯通りに華やかさが生まれ、宿泊客から好評を博している。「宵の散策事業」という新事業も生まれ、企画した若い民宿組合員の自信と希望にもつながっている。