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コロナ禍による空白でもたらされた地区社協活動の危機

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年1月23日

作新学院大学名誉教授 橋立 達夫(第3226号 令和5年1月23日)

今、地域ボランティア組織の多くが深刻な人手不足に陥っている(注1)。中でも地区社協(注2)の人材不足は深刻である。コロナ禍の下で、多くの地区社協が長期間の活動休止を余儀なくされてきた。この間にスタッフと住民の高齢化が併せて進行し、組織立った活動が困難になっている。ほとんど老老介護の世界であり、危機的な状況にある。

地区社協の活動内容は、児童(母子)福祉、高齢者福祉、障がい者福祉など全般にわたり、見守りや声掛け活動、健康に関する講座、広報紙の発行、ふれあいサロンやふれあい食堂、バザーなどが行われきた。3年近いコロナ禍の下で、公共施設の利用制限やクラスター発生の不安から活動休止が続いたが、制限が緩和されたことから、今、ようやく活動が再開されつつある。しかし新たなコロナ禍の心配と高齢化の進行により、たとえば人気の高かった介護予防の健康体操などへの参加者も以前と比べると半減している。

そしてさらに憂慮すべきことは、スタッフにも高齢化に伴う行動力の衰えが目立っているということである。活動は年数回のイベントに限られ、日常的なサポート活動は難しくなっている。社会の変化に合わせた新たな取組をする活力は出ようがない。もちろん常時、新たなスタッフの募集をしているが、まったくと言ってよいほど反応がない。厳しい経済社会の中で、「ボランティア活動をするのは、よほどの暇人か生活にゆとりのある人の道楽」と思われているのかもしれない。


しかし地区社協は、多少のほころびはあっても、身近なセーフティネットであることは間違いない。人材の拡充は急務である。社協の活動に年齢制限はない。中高生も歓迎である。若者は体験の場、大人は知識や経験を生かす場として、是非、多くの方の参加を望みたい。身近な社会で役割を担って暮らすのも悪くないですよ。国家構想の問題点


(注1)拙著『「地域デビュー」をすべきでない!?』町村週報第3164号 令和3年6月28日まず、デジタル田園都市国家構想とされている点に注意を払う必要がある。「地方に都市の利便性を、都市に地方の豊かさを」を実現するということであるが、基本方針には「全国に1、000カ所のサテライトオフィスを作る」とある。この構想の背景には、行政の効率化のための「集住」が強く意識されており、その延長線上で全国を1、000の都市、もしくは都市圏に集約するという合併論に向かうことが懸念される。

(注2)社会福祉協議会(以下「社協」)には、市町村社協と地区社協がある。前者は社会福祉法に「地域福祉の推進における、中心的役割を持つ組織」と位置づけられ、専従の有給職員を抱える組織として全市町村に設置されている。一方、後者は法的な位置づけはされておらず住民の自主的互助組織である。公的な助成金、補助金はあるが、スタッフの活動に報酬はなく、ボランティア活動により支えられている。