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JR只見線の全線復活

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年10月17日

ジャーナリスト 松本 克夫(第3217号 令和4年10月17日)

赤字ローカル線の廃止が相次ぐ中で、10月1日に福島県会津若松市─新潟県魚沼市間の135・2キロを結ぶJR只見線が約11年ぶりに全線開通となった。2011年7月の新潟・福島豪雨被害で三つの橋が流出し、福島県内の会津川口─只見間27・6キロ間が不通となっていた。JR東日本はバス路線への転換を提案していたが、「秘境路線」として知られる只見線存続は地元の悲願。復旧費の一部や年間約3億円の施設維持管理費などを県や地元自治体が負担することでJRとの合意が成立し、全線復活が実現した。

全線復活に貢献した1人が福島県金山町在住の郷土写真家、星賢孝さんである。星さんは建設業に従事するかたわら、約30年間にわたり年300日も只見線の写真を撮り続けてきた。四季折々の写真をSNSで発信し続け、国内だけでなく台湾など海外にも只見線ファンを増やしてきた。星さんの奮闘ぶりは、会津地方を拠点に制作活動を続ける安孫子亘監督によるドキュメンタリー映画『霧幻鉄道』に記録されている。

星さんは、ひたすら只見線を撮り続けてきたことについて「目的は地域の活性化。田舎を支えてきたのは公共事業だが、奥会津の建設業は5分の1になり、このままでは地域が消滅しかねない。観光で人を呼ぶしかないと頑張ってきた」という。もちろん、見慣れてはいても日々違う顔を見せる沿線の風景に魅了されたせいもある。「霧幻峡」をつくり出す夏の川霧をはじめ、秋の紅葉、冬の雪景色、春の花と四季それぞれに魅力があるという。

今後も厳しい経営が予想される只見線だが、星さんは「只見線はSNSで無料の広告塔になっている。乗客は少ないが、日本中から観光客が来るし、沿線には運賃の何十倍もの金を落としている。台湾からは九州や北海道経由でやってくる客もいる。その意味では只見線の効果は日本中に及んでいる。大きな目でローカル線を評価してほしい」と訴える。