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地方創生は競争から共生へ ~共進化の時代

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年9月12日更新

一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3213号 令和4年9月12日)

ここ最近、地方創生は、国全体の政策の中で、やや影が薄くなっているのではと心配している。しかし、循環型社会への転換が待ったなしとなっているこの2020年代、その先駆けとなるべきは、再生可能な資源やエネルギーに恵まれた地方、とりわけ中山間地域のはずである。地方創生の政策手法自体が、抜本的な進化が求められる時代だ。

今までの地方創生で気になっていたのは、行き過ぎた「選択と集中」の競争論理である。財政的な限界を背景に、他を押しのけても這い上がって来る「やる気のある」自治体を重点支援しようとする考え方に流れ過ぎると、地方創生は一種の「パン食い競争」の様相を呈してしまう。同じ主権者たる国民が暮らす地域の間で、あまりにも大きな格差が生まれることは、決して好ましいことではない。それを「上から目線」で差配できる権限は、誰にも与えられていないだろう。

また、財政的な制約にしても、現在の予算枠の中での分捕り合いを助長するのではなく、将来のエネルギーや資源、食料の持続可能な供給能力に対して国民的な先行投資を行うという視点で、最適な配分が為されるべきと考える。そうした幅広く生存を支える生産力は、今までは「大規模・集中・グローバル」システムによりトップダウンで開発されてきた。これからの循環型社会への転換局面では、「小規模・分散・ローカル」システムを再生させ、ボトムアップで構築していく必要がある。

多様な地域現場におけるシステム構築には、共通の正解はない。まずは、同時多発的なチャレンジの成功、失敗を素早くデータ共有し、共通する要因分析を行い地域政策に昇華させる政策形成のあり方を求めたい。そして、類似地域同士の学び合い・相違地域同士の補い合いを促す情報共有と共生関係のシステムづくりが、地域の共進化の決め手となる。全国町村会のようなネットワーク組織に、データサイエンスに基づく情報センター機能と地域同士をつなぐコーディネート機能の複合的な創出を強く期待する。