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力強い「地生地成」のまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年7月18日

力強い「地生地成」のまちづくり 作新学院大学名誉教授 橋立 達夫(第3206号 令和4年7月12日)

福島県湯川村の勝常地区に、地域共同店「角屋」が生まれた。国宝薬師三尊像を擁する古刹、勝常寺の門前である。活動の中心となった勝常地区環境保全会(農地・水保全管理支払交付金の受け皿組織、代表:兼子光右氏)の主催で、三澤豊隆村長を始め村内の方々が集まり、にぎにぎしくお披露目式が行われた。4年前に行われた『東北電力まちづくり元気塾』での度重なるまちづくりワークショップの中で、地区の夢として語られた3大プロジェクトが完成したのである。

3大プロジェクトの1つ目は『収穫感謝祭』。県内有数の米どころであるこの地区では、毎年春に、勝常寺で豊作祈願の花まつりが行われてきた。しかし収穫御礼の祭りがなかったことに気付いたことから生まれた取組である。昔は各家庭で行われていた豊作祝いのおもてなしを収穫感謝祭として復活させてみようということで、地区の女性たちが立ち上がり、最初の年の秋にはもう実行に移された。新米の試食や販売、トラクターの試乗体験、竹灯籠づくりなどが行われ、その後も継続している。

2つ目は『黒板塀プロジェクト』。「勝常寺門前の壊れかけたブロック塀の景観を何とかしてほしい」という来訪者の指摘から、新潟県村上市の『黒板塀プロジェクト』に学んで、景観改善の試みが始まった。クラウドファンディングによる資金集めから始まった活動は門前だけでなく参道にまで広がって、現在は写真のような景観が形成されている。

3つ目は『角屋復活プロジェクト』。前述のブロック塀に囲まれた勝常寺門前の空き地には、数十年前まで角屋という万屋があり、集落の賑わいや生活の中心で、参拝者のお休み処でもあった。無くなった角屋を復活し、集落の拠点、お休み処、そして米を中心とする地区の物産の直売所として蘇らせようというプロジェクトが4年目の今年、実現したのである。

地域の方々の、地域の豊かさや、失ってきたものの大切さへの気付きから始まったまちづくりだが、その熱意と行動の速さは驚くべきものであった。地域の中から生まれ地域の方々の力で成し遂げるまちづくりは力強い。