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町村の縁辺革命と地方都市の空洞化

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年5月16日

一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3199号 令和4年5月16日)

私が所長を務める「持続可能な地域社会総合研究所」では、この度、最新2020年国勢調査に基づく全市町村の人口分析や予測、安定化シナリオをまとめてみました。その概要は、研究所ホームページでも発表していますが、2つの大きな傾向が浮かび上がっています。

第一は、離島や山間部の少なからぬ小規模町村で、社会増や若年層の増加が起きています。これは、2015年国勢調査から出現した現象で、私は「縁辺革命」と呼んでいます。過疎指定自治体であっても、10・2%の市町村は、2015年と2020年の比較において実質社会増を達成しています。上位市町村を見ると、2014年に日本創成会議により「消滅可能性市町村」とされた自治体が驚異的な復活を遂げていることがわかり、とてもうれしくなります。高度経済成長以来続いてきた「大規模・集中・グローバル」の文明構造にあって、もっとも恵みが薄い「小規模・分散・ローカル」の中で生きている自治体に、新たな人口再生産の仕組みが誕生しているのです。

第二は、今や過疎の大半は、地方都市で起きているという事実です。過疎指定の820市町村を市部と町村部に分けて、人口動態や人口予測を比較してみました。人口総数で8割を占める市部において、この5年間の人口減少の7割が発生しています。今後の人口予測も比較してみましょう。2050年までの30年間減少率を見ると、市と町村の差はほとんどなく、4割前後となっています。そして減少の絶対量は、4倍近く市部が多くなっているのです。

今、地方都市は、大きな岐路に立たされています。今後益々絞られていく中央からの富の分配にあくまでしがみついていくのか、あるいは縁辺町村から始まっている「縁辺革命」の中で地元からの循環を積み上げ直すのか。地方都市の9割以上は、元々市場町として、周辺の農山漁村との循環から生まれました。これからの循環型社会への転換期、私は、地方都市が本来のDNAを呼び覚ましてほしいと心から願っています。