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地元から世界を創り直す時代

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年1月24日

一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3186号 令和4年1月24日)

今、世界では、循環革命が始まっています。2年前にドイツやオーストリアの農山村を視察して回りましたが、次々とエネルギー自給村が登場していました。昨年6月政府が発表した「地域脱炭素ロードマップ」では、2030年までに100か所の「脱炭素先行地域」をつくり、2050年に脱炭素を達成する全体像が示されました。しかし、政策提案の多くは総花的かつ縦割りで、社会の全体構造まで踏み込んだものとなっていません。

私の提言は、本気で循環型社会を目指すのであれば、その基本単位となる地域社会から抜本的に構築し直す必要があるということです。この基本単位を「循環自治区」と名付けました。日常的な暮らしの舞台となっている一次生活圏に相当し、人口規模は300人から3、000人程度となります。この新たな地元から、今まで否定されてきた「小規模・分散・ローカル」原理に基づく自治と循環と共生を、地方都市圏や地方ブロックへと重層的に組み上げていきます。

なぜ、「循環自治区」という基本単位から出発する必要があるのでしょうか。

第一には、循環型社会では、近隣の物質・エネルギー循環の中で人間活動を営むことが原則となるからです。第二は、今回のコロナ危機でも示されたように、暴走する「大規模・集中・グローバル」から一定程度「切断」されても生き残る強靭な小地域を創っていく必要があります。第三は、新たなエネルギーや交通システムへの長期的投資を、共同利用と合意形成が図りやすい小地域から進める必要があります。第四に、そもそも何らかの基本単位を設定しない限り、環境負荷や脱炭素の効果を診断し、地域比較しながら、相互に進化していくことが出来ません。

私の研究所では、昨年11月「地域社会の未来像を描く」全国研究フォーラムを主催し、中山間地域から持続可能な未来に先着する具体的な構想づくりを始動させています。人類にとって出直し的進化が求められる2020年代、地元から世界を創り直す時代です。