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コロナ後を自給力で乗り越えよう!

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年9月20日

民俗研究家 結城 登美雄(第3174号 令和3年9月20日)

地震・台風・土砂崩れ…。全国各地で起きる自然災害のすさまじさ。とてつもない被害と犠牲。加えてコロナ禍に支配されて展望の見えない日本と世界。私たちの社会はどうなるのか。ちゃんとやっていけるのか。むろん場当たり的政治ではこの事態に対応できず、経済中心で進んできた日本社会が苦しんでいる。どうしたらよいのか?なんとかならないか!しかし、少しも展望が見えてこない。そんな最中の今月初め、敬愛する経済評論家・内橋克人さんの死の知らせが届いた。89歳だった。内橋さんとは深い縁ではないが、地域づくりや地方のありようについて多大な学びとヒントを示していただいた。これだけ現場に足を運び、その土地に生き暮らす人々の悩みや願いに耳を傾けた人は少なく、それゆえ説得力があった。私にはそのひとつひとつが内橋さんの遺言のように思える。

市場原理主義に翻弄されている世の中に向けて内橋さんが主張したのは、例えば「FEC自給圏構想」である。弱肉強食の新自由主義が地域社会の衰退や貧困、さらには社会の分断をもたらしていることに警鐘を鳴らし続け、人と人が共生する経済への転換を訴えてきた。「FEC自給圏」とは、人間が生きていくうえで必要かつ大切なものは市場や海外に頼るのではなく、自分が暮らす地域でつくり出せる力をもつことである。その3つのテーマは、F(Foods 食糧)、E(Energy 自然エネルギー)、C(Care 医療・介護・福祉)を自給することが、コミュニティを強化し、地域が自立することにつながるという地域づくりの基本の追求である。私個人としてはF(食糧)の自給が気になる。日本の食料自給率は38%。6割以上を海外に依存してやっていけるのか。身近に食を支える生産者がいてくれること。それが地域で暮らす「安全・安心」の根本である。各自治体とそこを生きる住民の連携による多様な自給力のアップが求められている。