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バブルに踊らず、はじかれず

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年8月2日

フリーアナウンサー 青山 佳世(第3168号 令和3年8月2日)

今年は、暑いながらもすがすがしい夏にしたかったのですが、怪しい雲行きのまま夏に突入しました。オリンピックバブルに舞い踊ることを期待した面もありましたが、現実はバブル方式に閉じ込められ、どうも弾き飛ばされてしまいそうです。そもそも観戦チケットが当たらなかった私はテレビ観戦するしかなかったわけですが、私たち世代にとって二度とないこの機会をこのような形の開催にしてしまったことは本当に残念です。

都心でのワクチン接種もようやく順番が回ってきましたが、我が地域では、予約から接種まで、その流れはきわめてスムーズで、優秀な自治体だと感心しました。しかし当日、その舞台裏を垣間見て納得しました。それは医療従事者の確保はもちろんのこと、接種券の発送、予約や問い合わせのためのコールセンター、会場設営や案内などなど、ワクチン接種に対応するために、きわめて大勢の外部のスタッフを委託動員し、コストをかけた賜物の成果でした。「三週間後に二回目を打たないと効果がない」と言われていたことが、いつの間にか、「三週間から六週間の間に接種すればよい」に変わっていて、何が正確な情報なのか、偽情報なのか、私たち一般人には全く判断できません。

全国の自治体ごとの裁量によるさまざまな取り組み方も聞こえてきました。ある自治体では、人員も予算も限られた中で、災害時の教訓や訓練で培った知恵や連携を駆使して速やかな接種を実現できた事例が紹介されていました。その後にワクチンが足りなくなると接種のスピードを落すようにと水を差すような動きもありましたが、その総力を結集した自治体と関係各所の連携は見事で、誇りに思っていただきたいものです。十分な予算はあったほうがいいに決まっていますが、コストをかけても自治体の中で、歯車が動かないと効果的に回らないという事例をたくさん見てきました。強い地域力があるうえでの、予算確保は何においても必須の両輪であると思っています。

オリンピックの事前合宿も全国さまざまな地域で行われ、大きな不安を抱え、限られた環境の中でも精一杯のお迎えをしていました。

情報に翻弄され、対応に奔走したこの夏も確実に過ぎようとしています。無心に競技に参加する選手たちには大きな声援を送りつつ、終わった後には、しっかりと検証を行ってほしいものです。

バブルに籠る部分はしっかり籠り、しっかりバブルから踊りだせるよう準備をしておきましょう。