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アーバンな暮らし方

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年12月21日

法政大学名誉教授 岡崎 昌之(第3144号 令和2年12月21日)

都市とか都市的という言葉に対して、urbanまたはurbaneという英語がある。少し大きな英語の辞書をひくと、そこには二つの意味があることがすぐ分かる。一つは、田舎countrysideに対しての都市cityやbig townという意味合いだ。もう一つは主にそこでの暮らし方として、丁寧なpoliteとか、洗練されたsophisticatedやエレガントelegantといった意味合いがでてくる(主にOEDによる)。

つまり都市とは、cityに表わされるように、多くの人々が集住し、ときには無責任で垂れ流しの生活が許される、巨大な地域や空間を意味する。それとともに、もう一方でcitizenやcivilという言葉に関連付けられるような、丁寧で洗練された責任ある暮らし方や生き様という側面を持っている。

年初から始まった新型コロナウイルスの日本でのパンデミックは、人口比でみた重症者数や死者数で、米国やヨーロッパに比べ圧倒的に少ない。しかし日本でも今、第三波とも呼ばれる感染者数、重症者数の拡大を見せている。都道府県別でみれば首都圏や関西圏をはじめとした人口集中地域が他地域に比して圧倒的に高い累積感染者数を記録している。この大都市圏でも人口比で見れば、周辺部より都市部において感染者の比率は高い。比較的感染者数の少ない県でも県庁所在地等の都市部に感染者が集中する傾向が高い。

今回のパンデミックが示していることは、都市のあり方を問いかけていることではないか。都市の第二の意味、つまり、他を慮った丁寧で磨きのかかった暮らし方をいかに具現化し、実行するかということである。これは都市だけに限らない。町村の多くの暮らしの場である農山漁村においても当てはまる。他に過度に依存したり、他の生活領域にズカズカと足を踏み込むことなく、しかし一朝事あれば、すぐさま救いの手を差し出せる、気構えと気配りを怠らない暮らし方である。パンデミックを契機にした農山漁村への移住者も増えている。移住者にも、受け入れる農山漁村の側にも、このアーバンな暮らし方が求められる。