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観光のリスクマネジメント  ~「観光地継続マネジメント(DCM)」の導入と普及に向けて

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年4月20日更新

國學院大學 研究開発推進機構 新学部設置準備室 教授​ 梅川 智也 (第3117号 令和2年4月20日​)

新型コロナウィルスの感染拡大が続いている(3月上旬現在)。特に中国、韓国との繋がりが強かった地域や緊急事態宣言が出された北海道では大打撃を被っており、地域としても産業界としても危機感を抱くリーダーや経営者は少なくない。こうした時期こそ、中長期的な視点で人材育成や研修事業を充実させたり、収束以後の対策を練ったりしている地域もあり、観光地を持つ町村においては観光のリスクマネジメントを真剣に考えなければならない良い機会ともいえる。

観光分野のリスクといえば、地震や火山の噴火、台風、豪雨、豪雪などの自然災害(水不足、雪不足もリスクとなる)だけでなく、テロや戦争、外交関係の悪化、特定国への依存、さらには感染症など幅広く存在する。特に2011年の東日本大震災以降、地球温暖化の影響もあって、自然災害系のリスクが顕在化する頻度が高まっていると感じるのは私だけではないだろう。さらにグローバル化や移動の容易性が高まるにつれて地球規模での感染症系リスクは格段と高まっている。

こうしたリスクを平常時から想定し、いつ現実のものとなっても、なるべく早く通常の状態に戻す準備をしておくことをリスクマネジメントと言う。企業経営の分野には「事業継続計画(BCP)」の策定がある程度進んでいるが、観光地の場合、他所に移転して事業を継続することができないにも関わらず、観光地全体での事業継続という概念は希薄である。観光地経営の観点からは、危機や災害の発生による(1)観光客の落ち込みを最小限にし、かつ(2)如何に早期に元の状態に戻すかの2点が重要となる。しかも計画を策定するだけにとどまらず、いつでも実行に移せるよう関係者の間で訓練しておく必要がある。こうした取組を「観光地継続マネジメント(DCM)」と称し、その導入・普及が推奨されている。

例えば、観光産業を代表する旅館・ホテルなど宿泊業は、一旦危機や災害が発生すると、翌日から需要は激減、売上は限りなくゼロに近づく。そうした中で従業員の雇用を確保し、仮に自施設が被害に遭った場合、その修繕費も確保しなればならない。また、地場産業と密接にリンクする宿泊業の調達は裾野が広く、地域の食材など第一次産業だけでなく、お菓子や漬物といった製造業、クリーニングやマッサージなどサービス業、そして流通業など地域経済に多大な影響を与える。「雇用調整助成金」などの現行制度に加え、観光産業・観光地の永続的な発展のためには、例えば農業や漁業など他分野の事例も参考としつつ、復旧だけにとどまらない復興を含めたより総合的な支援制度の創設が今こそ必要とされている。